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患者のためのがんの薬事典

イホマイド(一般名:イホスファミド)
患者、学会の希望がかなった悪性リンパ腫の治療薬

取材・文 ●星野美穂
発行:2013年2月
更新:2014年1月

  

イホマイドはこれまで、小細胞肺がんや前立腺がん、子宮頸がん、骨肉腫、そして再発または難治性の胚細胞腫瘍などの治療に使用されてきました。2012年3月、イホマイドに新しく悪性リンパ腫への効能が追加されました。小児がん学会などからの要望がかなえられたものです。これにより、成人および小児の悪性リンパ腫治療の現場への貢献が期待されています。

海外では標準治療と位置づけられるイホマイド

イホマイドを含む治療レジメンは、小児では初回治療および再発または難治例に対する救済療法(ほかの治療法では効果が見られなかった後に行う治療)として、成人には難治例に対する救済療法として、国内外の教科書や診療ガイドラインなどで推奨されている治療法の1つです。

たとえばドイツでは病状が週単位で進行する「高悪性度」、もしくは再発の非ホジキンリンパ腫に対する併用化学療法が、フランスでは非ホジキンリンパ腫の初回治療やホジキンリンパ腫の再発に対する使用が標準的な治療として位置付けられています。

しかし、日本では悪性リンパ腫に対する適応が取れていないことから、保険診療で使用することはできませんでした。

そのため、小児血液学会や小児がん学会が厚生労働省の「医療上必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」に対して、適応追加の要望を出していたのです。

この「検討会議」で検討を行った結果、イホマイドの医療上の有用性がみとめられ、適応が追加されることになりました。

レジメン=投与する薬剤の種類や量、期間、投与方法を示した計画書

海外の複数の試験により有用性が示唆された

■図1 イホスファミドの効果
(Zelenetz A D et al:Annals of Oncology 14, i5- i10,2003)

日本における悪性リンパ腫の治療については、近年、新薬が続々と登場しています。それにより生存期間も延長し、完全奏効さえ可能となってきています。

ただし、それらは年単位で病状が進行する「低悪性度」もしくは月単位で病状が進行する「中悪性度」の悪性リンパ腫が主体です。週単位で病状が進行する「高悪性度」のリンパ腫には決定的な一打となる手段がなく、再発すれば次の一手がない状況でした。

一方、欧米では悪性リンパ腫に対するイホマイドを含んだ治療レジメンを用いた臨床試験が複数報告されており、イホマイドを含む治療レジメンの有用性が示唆されています。

たとえば、再発または初回治療に反応を示さなかった非ホジキンリンパ腫(全悪性度対象)に対するICE療法(イホマイド、パラプラチン、エトポシドの併用療法)と、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するR-ICE療法(ICE療法にリツキサンを加えた併用療法)の有効性・安全性を検討した試験では、奏効率(がんが縮小または消滅した患者の割合)は71.6%、CR(完全寛解)率は28.4%、5年生存率は29.2%という結果でした。

また、再発または標準的な治療であるアンスラサイクリン系の抗がん薬を含むレジメンに効果を示さなかったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に、R-ICE療法の有効性・安全性を検討した試験では、奏効率は78%、CR率は53%という結果が出ています。

今回、イホマイドの悪性リンパ腫に対する効能追加が行われたのは、このような欧米などでの試験結果が評価されたことによります。

パラプラチン=一般名カルボプラチン エトポシド=商品名ベプシド/ラステッド

標準治療で効果がなかった症例の救済療法として期待

■図2 イホスファミドの使用方法

日本における非ホジキンリンパ腫に対する標準治療は、R-CHOP療法です。R-CHOP療法の効果がない、もしくはR-CHOP療法で治療後再発した場合、低悪性度のろ胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫などは、新薬であるトレアキシン、フルダラ、ゼヴァリンが効果があるとされています。

イホマイドはこれらの新薬では効果が確認されていない、高悪性度のバーキットリンパ腫やNK/T細胞リンパ腫に対し、R-CHOP療法やCHOP療法で効果がなかった患者さんに対する救済療法として期待されています。

この救済療法は、薬剤の効果を直接比較する比較試験が実施されていないため、標準治療が確立されていない状況です。そのため、薬剤の選択は主治医の判断によりますが、海外のデータなどから、ICE療法やDeVIC療法(イホマイド、カルボプラチン、エトポシド、デキサメタゾンの併用療法)など、イホマイドを含んだ併用療法が行われるケースが比較的多いのではないかと考えられています。

トレアキシン=一般名ベンダムスチン フルダラ=一般名フルダラビン ゼヴァリン=一般名イブリツモマブチウキセタン

使用実績のある薬剤で治療選択が増える

イホマイドは生体内で活性化されたあと、腫瘍細胞のDNA合成を阻害して抗腫瘍効果を表すタイプの薬剤です。副作用には、出血性膀胱炎等の泌尿器障害、骨髄抑制などがありますが、これまでさまざまながん種の治療で蓄積されてきた経験をもとに、きちんとした支持療法を行っていくことが大切になります。

イホマイドへの悪性リンパ腫の効能追加は、多くのがん診療医が望んでいたことです。今回の効能追加により、ようやく保険診療のなかで医師の裁量で選択できるようになったことで、より一層の臨床現場への貢献が期待されます。

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