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患者のためのがんの薬事典

ミリプラ(一般名:ミリプラチン)
がんにとどまり効果を発揮。肝動脈化学塞栓療法の新しい抗がん剤

取材・文:柄川昭彦
発行:2012年10月
更新:2014年1月

  
写真:ミリプラ(一般名ミリプラチン)

肝がんには、肝動脈化学塞栓療法という治療法があります。肝動脈にカテーテルを送り込んで、がんの近くから抗がん剤を注入した後、ゼラチン粒などの塞栓物質で血流を遮断する治療法です。がんを抗がん剤漬けにし、さらに新たな血液が流れ込まないようにするのです。この治療のために開発された抗がん剤「ミリプラ」は、がんに長くとどまることができ、じわじわと効果を発揮します。

肝がんを対象に行われるカテーテルを使った治療

[肝動脈化学塞栓療法のしくみ]
肝動脈化学塞栓療法のしくみ

肝がんには、肝動脈にカテーテルという細い管を送り込んで行う治療法があります。まず開発されたのは、がんの近くの肝動脈までカテーテルを入れ、血管を塞ぐ物質を注入する「肝動脈塞栓療法」でした。

正常な肝臓には、門脈と肝動脈という2種類の血管から、血液が流れ込みます。しかし、肝がんは、そのうちの肝動脈だけから血液を受けています。そのため、肝動脈を塞いでしまえば、がんは血液から酸素や栄養を受け取れなくなるのです。

さらに、肝がんの近くまで送り込んだカテーテルから抗がん剤を注入し、そのうえで血管を塞ぐ治療が行われるようになりました。これが「肝動脈化学塞栓療法」です。

またカテーテルから抗がん剤だけを投与する「肝う動脈化学療法」もあります。

この肝動脈塞栓療法や肝動脈化学塞栓療法、肝動脈化学療法は、ガイドラインでも推奨され、国内で広く行われています。

水溶性の抗がん剤がよく使われていた

肝動脈化学塞栓療法では、抗がん剤と混ぜるのに、リピオドール()という液体が使われます。もともとリンパ管造影に使われる油性造影剤なのですが、肝動脈から注入すると、がん周辺に長くとどまる性質があることがわかってきました。そこで、リピオドールに抗がん剤を混ぜて投与する治療が行われるようになったのです。

この治療にはアイエーコール()やファルモルビシン()という水溶性の抗がん剤が使われていました。

ところが、油性のリピオドールと混ぜた液体をがんの血管に満たしても、しだいに水と油が分離し、抗がん剤を含む水溶液が、がんから先に抜け出してリピオドールだけが残ることになってしまうのです。

そこで、シスプラチンのようなプラチナ系抗がん剤で、かつリピオドールとの親和性が高い新しい薬剤の開発が進められてきたのです。

こうして2010年1月に発売したのが、ミリプラです。この抗がん剤は、油との親和性が高く、油とよく混ざり合って、その状態を持続させます。そのため、肝動脈に注入されると、がん周辺に長くとどまることができるのです。

ミリプラは、リピオドールと同じ成分のミリプラ用懸濁用液()に混ぜて使います。肝動脈からがんに投与すると、混ざり合ったまま、そこにとどまります。従来使われてきた抗がん剤に比べ、がんに長くとどまって、じわじわと抗がん剤を放出するのが特徴です。

肝動脈化学塞栓療法は、多くの場合、1 週間ほどの入院で行われます。

リピオドール=一般名ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル
アイエーコール=一般名シスプラチン
ファルモルビシン=一般名エピルビシン
ミリプラ用懸濁用液=一般名ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル

副作用の発熱や痛みには解熱鎮痛薬で対処

この治療の特徴的な副作用としては、発熱がよく起こります。治療後間もない時期と、1週間以上たってからが起きやすい時期で、38℃以上の熱が出ます。原因はよくわかっていませんが、治療を受けた人のほぼ全員に起こります。

また、約半数の人には、肝臓付近の痛みや、カテーテルを入れた脚の付け根に痛みが起こることがあります。

これらの症状は、一般的な解熱鎮痛薬で対処することができます。発熱や痛みは、がまんせず、医師に伝えることが大切です。

繰り返し行える治療

[ミリプラチンによる肝動脈化学塞栓療法の治療過程]
ミリプラチンによる肝動脈化学塞栓療法の治療過程

肝がんは、治療が成功してがんが消えたとしても、また新たに出てくることがよくあります。日本人の肝がんは、多くの場合、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因となり、慢性肝炎や肝硬変になることで、がんが発生してきます。肝臓自体が、がんを発生させやすい状態になっているのです。

そのため、たとえ現在できているがんを治療しても、しばらくすると、新たな肝がんが発生してくるのです。したがって、肝がんの治療は、繰り返し行えることが大きなメリットになります。

その点、肝動脈化学塞栓療法は、患者さんの体に大きな負担を与えず、繰り返し治療することができます。肝がんに対する代表的な低侵襲治療だといえるでしょう。

がんの近くの肝動脈に注入するため、全身投与する場合に比べ、少ない量でも、高濃度の抗がん剤をがんに送り込むことができます。さらに、手術のように開腹することもなく、肝臓を切除することもありません。

こういったメリットがあるため、肝動脈化学塞栓療法は、現在多くの患者さんに行われています。

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