森川那智子のゆるるんヨガdeほっ! ゆるゆるセルフケア 109
正座をもっと活用しよう <あぐら座(胡坐)・正座(金剛坐)・坐布を使った正座>
いかにも日本らしい座り方というと、今でも多くの人が〝畳に正座〟をイメージされることでしょう。正座をすると自然と背筋が伸びて、姿勢も呼吸も安定し、それに伴って気持ちも落ち着きます。
その通りなのですが、正座をしたことのない世代や、中高年にとっては膝(ひざ)の負担が大きく、畳敷きの部屋でも多様な人々が利用する場所では、椅子を使ったり、堀り炬燵(ごたつ)式になっています。今や正座は、限られた人が限られた場面でするものになってきています。
ところで日本人の正しい座り方として「正座」が採用されるのは、実は明治になってからとご存知でしたか? 明治政府は日本人の行儀作法の指針として「正式な座り方」を正座と決めたのです。
正座が広く一般に普及していくのは江戸中期以降で、元禄以前は女性も片膝を立てたり、あぐらをかいていたことがわかっています。「お市の方」や「寧々さま」が立膝やあぐらをかいていた姿はかなり想像しにくいものがありますが、当時の着物は、今の和服と比べ身幅がずっと広く、ゆったりまとって、紐と言っていいくらいに細めの帯で縛って、という着方だったそうです。これだと足の自由度が増します。現代の感覚からすると、だらしなくしどけなく見えるくらいゆるゆるした姿かたちだったと思われます。
源氏物語絵巻に描かれている高貴な女性たちも、十二単の下は小袖(着物)を着て正座していたかのように思われがちですが違います。短めの小袖の上に、ゆったりとした袴を2枚はいていました。素肌に直につける袴とその上にもう1枚。スカートと言ってもいいくらい幅がゆったりしていて、丈は長めです。その中で、どんな座り方をしていたのか、絵からはよくわかりません。きっと今の部屋着がそうであるように、その時その場で、立膝になったり、横座りしたり、あぐらや割座や正座にもなったことでしょう。正座にしても女性も必ずしも両膝をそろえていたわけではありません。
正座を多様な座り方の1つととらえると、正座は優れて機能的な座り方です。ヨガでは「金剛坐(バジュラ・アーサナ)」と呼びます。
基本的には正座と変わりませんが、足の親指を重ねません。足首が柔軟になると、尻はマットにじかに触れるようになります。しかし坐布(ざふ)を尻に当てると画期的に膝や足首が楽になり、左右均等に体重がかかるので腰への負担もほとんどありません。
30年来の友人がいる南インドのアジュラムでは、今ほとんどの人が坐布を使って正座で瞑想しているそうです。
優れて機能的なところとしては、このほか立ったり座ったりが楽にできることです。正座の姿勢からかかとを立て、すっと立てます。
逆に言えば比較的短時間であれば、気持ちを整えるのに正座は最適です。そして立つ、座るは、脚力・バランス力・集中力を養う効果が大なのです。
ヨガの座り方にはこのほか何通りもありますが、あぐら坐(胡坐)と比べてみてください。あぐら坐からすっと立ち上がるには少なからずコツが必要です。安全に立ち上がり、安全に座るためには手をつけばいいのですが、こちらもエクササイズとして行ってみましょう。
<あぐら座(胡坐)・正座(金剛坐)・坐布を使った正座>
あぐら座(胡坐)
❶床に腰を下ろし、膝を曲げ、それぞれの膝の下に反対側の足が来るようにする。脊柱をすっと立てる。そのまま3呼吸。
❷両腕を前に伸ばし、両足の外側に力を入れて、一気に立ち上がる。呼吸を整え、逆の順序でゆっくり腰を下ろしていく。左右の足を変えて同様に。2セット。
正座(金剛坐)
❶両かかとを十分に開き、その上に尻を下ろす。脊柱をすっと立てて、3呼吸。
❷かかとを立て、そのまま一気に立ち上がる。どちらかの足を少しずらすとやりやすい。呼吸を整え、逆の順序でゆっくり腰を下ろしていく。左右の足を変えて同様に。2セット。足をずらさないで行う場合は4セット
坐布を使った正座
❶正座補助具を尻に当てる。
❷膝を適宜に開き、背筋をすーっと立てる。腰や膝への負担が少ないので、瞑想に最適。最初は穏やかな呼吸で10呼吸。目を半眼か閉眼。呼吸のプロセスに意識を向けて。
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