森川那智子のゆるるんヨガdeほっ! ゆるゆるセルフケア 110
体を温めて免疫力アップ <火呼吸>
近年の免疫学の研究から、免疫力に体温が深く関係していることがわかってきました。それによると体温が1℃下がると、免疫力が30%も減少するのだそうです。
東洋医学では昔から「冷え」は体の不調を招くと言われ、夏の暑い盛りでも、冷たい飲料の飲みすぎなどで体を冷やさないように言われてきました。
古来の健康法では、まず体を不用意に冷やさないようにし、さらには積極的に体を温める工夫をします。
昭和まではよく見られた乾布摩擦(かんぷまさつ)なども、皮膚を乾いた布でこすり、血流をよくして免疫力を高めるというものです。着衣したままでいいので、手首と前腕、足首と下腿、頸(くび)周辺を手のひらでソフトに素早く各10~20秒ずつ、さするだけでも効果的です。
ショウガ湯や甘酒も体を温めてくれます。バランスのとれた食事、十分な睡眠は言うまでもありません。
現代人は低体温
ところで、自分の平熱がどれくらいかご存知ですか? 現代人は平均体温が低くなっています。
若い女性たちがダイエットを日常的に続けているため、見かけはやせていても筋肉量が減って、基礎代謝も体温も低めな女子が増えていると、随分前から指摘されてきました。彼女たちの手足は驚くほど冷えています。
ダイエット志向の低年齢化や運動不足が日常化しているためか、平熱が35℃台の子どもが増えていると聞きます。最近の子どもの体温は、50年前と比べ1℃近くも低下しているのだそうです。
一般的に子どもの体温はやや高め、お年寄りの体温はやや低めと言われていますが――女性の場合、更年期を過ぎると基礎体温を測ることもなくなり、自分の平熱を知らない人が少なくありません。まずは自分の平熱を知っておきたいですね。
治療のため薬を服用している場合も、体温が低くなる傾向があります。がんサバイバーの多くは意識的に体温を上げる工夫をしています。
例えばヨガ。ヨガは汗だくになるわけではないのに、どんなポーズを行っても、じわーっと体の深部が温まってくる気持ちよさがあります。
ポーズを行った前と後では体温は0.2℃~0.5℃も上昇します。実は呼吸法だけでも体を温めることができます。
代謝と体温を高める呼吸法
今月紹介する「火呼吸」はまさに代謝を高め、体温を高め、免疫力を高めます。呼吸ですから場所に関係なくできて、ごくごく短時間で、体が温まってきます。
火呼吸は別名「ふいご呼吸」とも言います。〝ふいご〟というのは、火を熾(おこ)すのに用いた送風器で、金属の精錬や加工の際に火の温度を上げたり、火力を強めるために使用された器具ですが、今では、実物を見たことがある人もほとんどいません。
要は、素早く力強く、ぐっぐっぐっぐっと腹筋を使って腹部を連続的に凹ませるという呼吸法です。
ちょっと腹筋が疲れてくると、鼻先でふがふがと息を出して、「やっているつもり」だけになりますから、慣れるまでは手をお腹に当てて、腹部の動きを感じながら行いましょう。コツがつかめてきたら、両手は膝に伸ばしたまま行ってください。
不安や緊張にさらされると、呼吸を止めていることが増えてきます。どこにいてもできる呼吸法で、息を見直すきっかけになります。
火呼吸を終えるとお腹も背中も温まり、横隔膜も柔軟になり、呼吸が自然と深くなりますよ。
<火呼吸>
座布団やタオルなどを敷いて、寒くない工夫をして行いましょう。ここでは、しっかり腰を下ろした姿勢で行う方法を紹介していますが、慣れてくればイスに腰掛けたまま行ってもOK。
火呼吸は、1回0.5秒~1秒弱で、腹部を瞬間的に思い切り凹ますことをリズミカルに繰り返す呼吸法です。10回連続して1セット。意識するのは腹部をぐっと凹ますことに(ぐっと引き上げるような感じ)だけ。後は反射で息が入ってきます。
❶安定した楽な座り方で座る。写真は吉祥座という座り方をしている。左足を右腿(もも)内側につけ、右足をその上にのせ、足先を左足の腿とふくらはぎの間に入れて安定させている。どういう座り方でも尻がしっかり床につき、骨盤を安定させられ、脊柱がすっと無理なく伸ばせればOK。
❷右手を腹に軽く当てて、腹部の動きを手で感じるようにする。軽く息を吐き、ゆったり吸ってスタート。1、2、3……10までカウントしながら、力強く素早く1回1秒弱でぐっぐっと、腹筋を使って腹を凹ませる。すると反射的に息は肺から押し出され、また腹部が緩むと反射的に息が鼻からは入ってくる。
10回目、深く十分息を吐ききり、ゆったり2呼吸して、もう1度スタートする。2~4セット。慣れてきたら20回を1セットで。①の姿勢に戻り、普通にゆったりと呼吸を整える。脚を組み換えて同様に行う。
ポーズモデル 1月号、2月号のポーズモデルはがんサバイバーでもある栗木登志子。「こころとからだクリニカセンター」でヨガ&ヨガ療法を受け持っています。がんを発症し、左乳を全摘してから17年。本格的なサバイバーです。現在「60歳からのヨガ」に力を入れています。
●こころとからだクリニカセンター PC www.kokokara.co.jp/ 携帯 www.kokokara.co.jp/m/
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