森川那智子のゆるるんヨガdeほっ! ゆるゆるセルフケア 114
「ちょっと痛くても動かそう」 <ヤシの木のポーズ>
身近な人が乳がんになって、改めて術後リハビリ体操の必要性と難しさを感じています。
何が難しいかというと、病院が配布している乳がん術後のリハビリ体操の解説には、「痛みを感じたらあまり無理をしないで……」とあります。
この「あまり無理をしないで」の解釈を巡って、どれくらいの痛みなら、「痛みがあってもやったほうがいいのか」、どれくらいの痛みから、「しないほうがいい無理」になってしまうのか迷ってしまうのです。
医師が「痛くても、やったほうがいい」と明言してくれてはじめて納得します。納得しても、痛みを押して腕を動かすと、「傷口が開いてしまうのでは」と不安になります。
Tシャツを着る、脱ぐといった、それまで何の違和感もなくやれていたことが、痛みを感じて、ぎこちないものになる。一事が万事で、術後の身体の変化にいちいち戸惑いを感じてしまいます。
どれも重大な支障ではないけれど、無視できるほどでもなく、ちりも積もればなんとやらで、意外とストレスがたまってきます。痛みをただ痛みとして感じるだけでなく、おっくうに感じたり、不安に感じたり、みじめにすら感じることもあるでしょう。
「思いやりのある好奇心」を持って
ヨガ経験者は痛みとの向き合い方がうまいなと思います。
痛みだけでなく、なんとなくヘンな感じとか、コリや冷えやだるさなどについても、体のどの部分がどんなふうな感じなのか、「思いやりのある好奇心」を持って向き合うのです。
だから、ヨガ未経験者もヨガを始めることで、そのように体の変化と向き合うワザを身に着けていくようになれます。
いつもはヨガを行うときは、「気持ちいい」を基準にします。その動作によって引き起こされる刺激が「イタ気持ちいい」ところまで、といいます。
でも術後リハビリは、痛くてあまり気持ちよくありません。
しかし、丁寧に分け入って感じてみると、血流がよくなって、イタ温かくなります。それはこれまであまり慣れてない感覚だと思います。
しかし、少しずつ行うことで、可動域は必ず増大し、数カ月後には「イタ気持ちいい」境地が復活してきます。
今月紹介するのは椅子に座って行う「ヤシの木のポーズ」です。このポーズはもちろん立位でも、正座や安座で行ってもOKです。
1日3回、朝・昼・就寝前に行ってください。
このポーズを通して、自分の術後の体に「思いやりのある好奇心」を持って向き合うコツがつかめてきます。すると乳がんリハビリ体操も、おもしろくなってくるはずです。
<ヤシの木のポーズ>
①イスに深く腰を下ろし、脊柱をすーっと伸ばす。顔は正面、遠くをやわらかく眺める
②まず手術してないほうの腕から行う。息を吐いておいて、静かに息を吸いながら、ゆっくり腕を前から上方にあげる
③上方にあげたら、楽な呼吸をしながら、肩や首から余分な力を抜き、指先を上に上にじわーっと伸ばす。4呼吸
④次の吸う息で指と指の間隔を開き、手のひら全体をじわーっと大きく開く(反らすのではなく)
⑤息を吐きながら、ゆっくりゆっくり腕を横から下ろしていく。中指の先が腕の付け根から最も遠い弧を描くように下ろす
次は反対側、術後側の腕を行う。痛みを感じるところまでゆっくり上げて、痛みを感じながら、静かに呼吸を続けて保持し、ゆっくり下ろしていく
⑥次は両腕同時に行う。肩や首をリラックスさせながら行う
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