もりかわ なちこ　こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』（すばる舎）『リラックスヨガ』（成美堂出版）など著書多数。近著に『心がラクがずっと続くヒント』（青春出版社）

駅の階段を普通に歩いて上っただけなのに、息が切れて、つくづく足腰の筋肉の衰えを実感したという人は少なくありません。スクワットや、ヨガの中腰のポーズなどで、足腰の筋肉群を鍛えるようにすると、効果はすぐ実感できるようになります。

たびたび起きる腰痛によって、背筋や腹筋が落ちていることに気づいた場合なら、ウォーキングや体幹強化のエクササイズを取り入れると、まず腹部や腰回りが引き締まってきます。そして半年くらいあとに、そう言えば、最近腰痛に悩まされることが減ってきたと気づかされることでしょう。

それに比べ、ペットボトルのキャップを開けるのにちょっと難儀したという経験は、ともすれば見過ごされがちです。少なくともそれで手指のエクササイズを開始したという話はあまり聞きません。けれども手指の力が落ちると、生活のいろいろな場面に影響してきます。

そう言えば、80歳を少し越した母と海外旅行をしたときのことです。当時母は1人暮らしをしていて、心身ともにまだまだ元気でした。それなのになんと、バスタブの蛇口が少し硬めで開けられず、不機嫌そうな声で「これ、開けてちょうだい！」と大声で叫んだのでした。

自宅ではビンのふたが開かないときは、ゴムパッキングを使ったり、そのほかいろいろ工夫して、不自由さをほとんど訴えませんでした。

今から思うと、まず買い物袋を持つことがままならなくなり、宅配で日用品の買い物は済ませるようになり、次いで生鮮食料品も宅配で頼むようになっていました。時々好物のマグロの刺身をもっていくと、それは喜んだものでした。自分の眼と鼻で鮮度を確かめながら買い物したかったんだろうな……。

リンパ浮腫の予防に伴い、手指の力が弱ってくる

ところでリンパ節を郭清した乳がんサバイバーは、比較的若いうちから、手指の力の衰えを感じるようです。

というのもリンパ浮腫（ふしゅ）の予防策の1つとして、重い荷物を持たないようにすることが求められているからです。それ以上に、施術側の腕への虫刺されや擦り傷、ほんのちょっとしたかすり傷にも用心しています。

しかも手術後10年以上経過しても、リンパ浮腫が起こることがあるのだそうです。そして中等度以上の浮腫が起こると完治することが難しく、とにもかくにも予防が第1なのだと言います（リンパ浮腫について）。

そのため腕全体に負荷がかかるエクササイズも控え、日常生活でも、バッグを手でぶら下げて持つこともしなくなります。そして知らず知らずのうちに手指の力が弱ってきます。

なので今月は壁を使って手指を強化する「手指ヨガ」を紹介します。なるべくリラックスしながら、呼吸とともに手指、腕や肩、背中などにどんな刺激が引き起こされるのかマインドフルに行ってみましょう。

壁を使った手指ヨガ１

壁を使った手指ヨガ２

①壁の前に立ち（椅子に腰かけてもOK）、肩もしくは肩より少し高めの位置に両手を置く。肩はリラックス、頸を肩からすっと伸ばして姿勢を整える。中指の先を上に向けて、息を吐きながら指を1本1本じわーと開く。そのまま呼吸を2～4回

②今度は両手の指先を内側に向けて2～4呼吸

壁を使った手指ヨガ３

壁を使った手指ヨガ４

③外側に向けて同様に

④最後は指先を下方に向ける

壁を使った手指ヨガ５

壁を使った手指ヨガ６

⑤今度は手の甲を壁につけるように置く。指先を上に向け、肘もリラックス。じわーっと指間を開いて2～4呼吸

⑥指先を内側に向けて2～4呼吸

壁を使った手指ヨガ７

壁を使った手指ヨガ８

⑦指先を外側に向けて同様に

⑧指先を下に向けて同様に

壁を使った手指ヨガ９

⑨次に、①と同じように手を置き、手のひらの真ん中、足でいえば土踏まずのあたりを浮かすようにする。サッカー日本代表の浅野拓磨選手の「ジャガーポーズ」の手指のイメージです

2～4呼吸。両手を同時に行うと、利き手や普段使っている手のほうが楽に指先に力が入るので、左右別々に行うとよい。これは少々きつい。肩や首にこわばりを感じたらやりすぎ。もう少し力を抜いてやってみよう

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