もりかわ なちこ　こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』（すばる舎）『リラックスヨガ』（成美堂出版）など著書多数。近著に『心がラクがずっと続くヒント』（青春出版社）

最初に目が釘付けになったのは地面を這いまわる蟻の絵でした。雑誌のグラビヤで紹介されていたと記憶しています。＊熊谷守一という名前もそのとき、初めて知りました。

赤茶色の地面と、そこから生えているタンポポの葉に似た植物と、蟻が5、6匹。

その絵を見ていると、子供のときは、こんなふうに情景を見ていたと、記憶が蘇ってきました。地面にしゃがみこみ、前かがみになって顔を地面や石垣に近づけ、蟻の動きをただ見続ける。蟻は小さな穴から絶え間なく這い出てきて、あたりを一心不乱に動き回る。

目を凝らしていると、空気が密度を増してくるというのか、この世界が、地面と小さな草と動き回る蟻たちでみっしりと満たされる、静かな瞬間が訪れます。子どもの私は、なぜだか幸福感で頭がぼーっとなるのでした。

その絵が描かれたのは、1970年、画家はなんと90歳。このすごい画家の作品を200点以上も集めた没後40年の展覧会（東京国立近代美術館 3/21迄）を観ながら、その展覧会のタイトルのままに「生きるよろこび」にしびれました。

＊熊谷守一＝（くまがいもりかず）1880年～1977年。日本の画家。明るい色彩とはっきりしたフォルムを特徴とする作風で知られている

バランス力は年齢と共に低下するも努力で回復

初めて立ち上れた瞬間、1歩でも2歩でも、自分の足で歩けたときって、どんな感覚だったのか。小さな子どもの表情を見ていると、にっこにっこしています。そして同じように笑って腕を広げている親の腕の中に飛び込みます。

その喜びの瞬間を人はほとんど記憶していませんが、何かの拍子でそれに近い感覚が蘇ってきます。土や砂や草の上に素足でじかに立ったときなどです。もちろん安全が保障されていることが条件ですが、なぜだか笑いがこみ上げてきます。

今月紹介するのは＜片足で立つポーズ＞で、バランス感覚を養うポーズです。これまで何度も書いてきましたが、バランス力は年齢とともに思いがけないくらい低下していきます。しかし、少しずつでも続けていくと、着実にバランス力は回復していきます。問題は嫌にならずに続ける工夫です。

私は今、70歳～85歳くらいの女性グループに、月に1回ほどボランティアでヨガを教えています。教える私も、すぐ後を追う年齢です。難しすぎると面倒になってしまう気持ちはよくわかります。

また、バランスを失って、こけたりしたら大変ですから、壁の横に立って、いつでも壁に軽く手がつけるようにして行ってください。

40代50代では少し物足りないかもしれません。足指とかかとで床をつかむ動作を取り入れます。土踏まずのアーチ、親指付け根と小指付け根を結ぶ横のアーチをしっかり感じてから行います。

また、左右の足では、安定感に差があります。できるほうの足からやって、コツをつかんで反対側に。

片足で立つポーズ１

片足で立つポーズ２

①両足をそろえてすっと立ち、胸の前で、右手を左肘に、左手を右肘に添える。両足を床につけたまま、左右の足にそれぞれ重心をかけてみる。より安定感のある足を軸足にして始めよう

②ここでは左足を軸足とする。右脚の大腿部をふわっと上に上げる。腰を後傾させることなく、ふわっと上げる。太腿が床と水平になるくらい上げる。穏やかに2～8呼吸する

片足で立つポーズ３

片足で立つポーズ４

③いったん①に戻し、右足を今度は後ろに上げる。腿は床と垂直、膝頭を床に向ける。大丈夫そうなら、写真よりさらにかかとを腿裏に近づけてみよう。2～8秒

④①の姿勢に戻し、右足のかかとを上げる。足指は床についている

片足で立つポーズ５

⑤足裏を左脚膝（ひざ）下につけて（これで十分だが、もっと上、膝横や膝上や内腿と上げていくのも飽きない工夫になる）2～8呼吸。ぐらつきそうになったら、いつでも足指を床につけた④の姿勢に戻す。反対側も同様に。いっぺんに全部やろうとすると時間もかかるので、②③、④⑤と分けて、左右やってみるとよい

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