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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第3回 小さな痛みとのつき合い <体側を伸ばすポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2018年8月
更新:2018年10月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

ちょっとした痛み、命に別状ないような痛みとのつき合いは、誰にとっても子供のころから少なからず経験し、そんなときはどうすればよいのか、それぞれに学んできています。擦り傷や切り傷、小さな火傷や打撲の痛みなど、ちょっとした不注意によって起きた痛み。注射のチックとした痛みや虫歯の治療時の痛みなど、その後の健康な生活のために不可避と承知している痛み。そして頭痛や腹痛など、その痛みの程度から原因や適切な対処をあれこれ考える必要がある痛みです。

年齢を重ねるにつれ、平静でいられないような痛みとも出合い、それが一刻も早い医療的介入が必要な痛みか、原因がわからず当面つき合っていくしかない痛みなのか、見当をつける力も求められます。

今回は、自分がちょっとした痛みにどう反応するのか、観察してみようという提案です。観察することで、痛みとのつき合い方も、痛みから受けるストレスも違ってくることに驚くのではないでしょうか。

例えば、ある女性は、母親の悲観的な言動に胸を痛めると同時にうんざりしていました。

調理中の油が飛んで手に少し火傷しただけでも、「ああ、やだ! ヘマばっかして」と激しく自己罵倒して、むっつり不機嫌になってしまうのでした。

ちょっとした痛みの反応を観察する

今回は「体側を伸ばすポーズ」を通して、具体的に紹介していきますね。

乳がん術後の腕が上がりにくい人にとっては、リハビリ体操としても有効ですし、そうでない人にとっても、ちょっとした痛みと自分はどうつき合っているのか、気づきが多いエクササイズとなります。

できる、できないは、この際いったん脇に置くことにしましょう。

<体側を伸ばすポーズ>

体側を伸ばすポーズ1

①両足を大きく開いて立ちます。左右の脚と床で作られる三角形が正三角形になるくらい開きます。つま先は正面に向け、両腕は、最初は体の脇に沿ってすーっと下に伸ばします。頭のてっぺんは、ふわっと高く上方へと意識します。

鏡を見ないで(つまり目を半眼にして)、自分では両肩が平行になっていると思ったところで、目を開き、鏡を見ます。どちらかの肩が上がっているかもしれません。すぐ直さないで、「あ、そうなんだ」と受け止めます。それからゆっくり、左右の肩を平行にします。

体側を伸ばすポーズ2

②息を吐き、ゆっくり息を吸いながら、両腕をゆっくり水平になるまで上げていきます。そのままの姿勢で、できる自分の呼吸を続けます。

両腕を上げると、慣れてないとたいていの場合両肩に力が入り、肩が上がり、極端に言えば頸(くび)が少し肩に埋まります。

自分の場合はどうか、肩へ注意を向けます。そして肩から余分な力を抜くように、自分の両肩にメッセージを送ります。肩から余分な力が抜けると、腕の長さが、指先のほうに少し伸びます。両腕の指先から指先までのリーチが少し長くなる感じです。

大事なのは、そう感じない場合は、「そうか、今のところそうは感じないな」として、そのままでいることです。「何故なのだろう、やり方が間違っているのだろうか」など、考えを発展させないでいましょう。

もしかすると、イラっとくるかもしれません。そうした感情の動きにもマインドフルになってください。「そうか、今、イラっとしたかも」と、ただ気づきます。

肩から力が抜けると、肩の位置が少し下がり、頸がほんの少し上に伸びるのにも気づくかもしれません。4~8呼吸保ってから、ゆっくり両腕を下げて、呼吸を整えます。

もう一度、同様に行います。

今度はどうでしょう? 両腕を水平に伸ばして、この姿勢を保持していると、胸郭が普段より広がっているのに気づくかもしれません。保持しているうちに、あるいは、腕の重さを感じるかもしれません。

体側を伸ばすポーズ3

③今度は骨盤の位置はそのままで、水平にしていた腕を息を吐きながらゆっくり右に倒していきます。

体側を伸ばすポーズ4

④息を吸って、左手のひらを返して、指先をぐーっと上方に伸ばします。

そして息を吐きながら、上体をさらに右に倒します。左の体側がジワーッと伸ばされ、右手は重力に従って下に力を抜き、右手は上に、左へと伸ばしていきます。この姿勢でできる楽な呼吸で4~8呼吸保ちます。

もちろん左腕は今この瞬間、上げられるところまで上げていきます。体の内側の感覚に注意を向けて、今日の限界まで上げていきます。ちょっと痛みがあるかもしれません。それはどんな痛みなのか注意深く吟味していきます。

感情にも思考にも注意を払って、気づいていきます。どんな感覚や感情や考えが沸き起こっても、よいとか悪いとか価値判断しないでそのまま受け取ります。

もしかすると「こんなふうに感じるべきでない、集中してやらなくちゃ」という考えがよぎるかもしれません。そのときはその考えに気づいて、「そうか、そう考えてるか」と受け止めていきます。

ゆっくり吸いながら②の姿勢に戻し、息をついで①のスタートの姿勢に戻し、呼吸を整えます。少し休憩して(2、3呼吸)、反対側も同様に行います。

どうでしょうか?

今日のできるところまで、そしてちょっと痛いかもというところで、どんな気持ちや考えが湧いてくるのか、気づきながら行っていく。気づくということは、その瞬間起きている感覚や感情や考えと自分が一体化しているのなく、少し距離を持って、思いやりを持って眺めている状態です。

次に、ちょっとした拍子に、ドアに指を挟んでしまったようなとき、その痛みに注意を向けて、それがどうなふうに痛むのか、ズキズキなのかジンジンなのか、熱は帯びているかどうか、そしてその瞬間、頭の中をよぎる考えと感情(あっ、バカ! うかつ者‼︎ とか)、観察してみてください。きっとこれまでの痛みの体験と少し違いがあるのでは?

前述の女性の母親だって、もし、こんなふうに痛みにマインドフルネスになってみたら、きっと痛みを違ったふうに受け止めたことでしょう。

次回はもう少し大きな痛みとの付き合いについてお話しします。

 

●こころとからだクリニカセンター
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