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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第7回 シノリエさんの場合 <背中で足をつかむポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2018年12月
更新:2018年12月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

こころとからだクリニカセンターで、がんサバイバーのためのヨガを指導しているシノリエさん。彼女が1人のがんサバイバーとして、乳がんとヨガとマインドフルネスについてエッセイを寄稿してくれました。

今回はそれを紹介しましょう。

東日本大震災の年に乳がん発覚

2011年3月11日、誰もが忘れることのできない未曾有の出来事、東日本大震災が起こりました。遠く離れた地に住んでいながら、少しの揺れでも恐怖に怯え、携帯電話から緊急速報のけたたましい音が鳴ると、またあの日が来るのではないかと不安が襲ってきました。

震災から1カ月あまり経った4月半ば、キャンディーズのスーちゃんこと田中好子さんが乳がんで亡くなったと報道されました。子供の頃、歌番組にかぶりつき、踊りを真似してスーちゃん役を取り合った憧れのアイドルの死はショックでした。スーちゃんの死が記憶から薄れかけた翌月末、今度は私自身に乳がんが発覚したのです。

私の心は、大震災、憧れていた芸能人の死と、立て続けに起こった恐怖や悲しみで妙な興奮状態が続いていました。そんな中で発覚した乳がんが、私にとってのマインドフルネスの重要性を実感することになりました。

胸のしこりに気がついてはいたが

乳がんが発覚したのは、ブラジャーが血の塊のようなもので汚れているのを見つけたことがきっかけでした。実を言うと、以前から胸にしこりらしきものがあることに気づいていたのです。いろいろ調べてみると、どうも乳がんのしこりとは違うように感じたので、脂肪の塊に違いないとほったらかしていました。そういう経緯があったため、ブラジャーの汚れを見たとき「これは、ただ事ではない」と察したのです。

ずいぶん前から、2人に1人ががんになると言われているのに、実際になった人の多くが「まさか、自分ががんになるなんて」と言います。私も例外ではありませんでした。

仲良しだった先輩が乳がんで亡くなったとき、大きな悲しみで泣き暮れたにも関わらず、いつの間にか忘れているのです。それは、どこか他人事に感じていたからに違いありません。

検査の結果が出るまでの1週間は〝乳がんかもしれない〟〝乳がんであるはずがない〟と、相反する思いが行ったり来たりしていました。

「残念ながら、乳がんです」と告知を受けたとき、ショックというよりテレビドラマのワンシーンのように思えました。「残念ながら」という言葉がセリフに聞こえ、次の言葉は「乳がん」だと想像できるのに、現実を受け入れたくない自分がそこにいたのかもしれません。

マインドフルネスの「今、ここ」に気づけた

私は告知を受けた日からじっとしていられず、ヨガに没頭していったのです。少しでも時間ができるとインターネットで治療方法や予後を調べ、死まで想像することもありました。そうかと思えば、乳がんの自分が特別のような気がして、ハイテンションに明るく振舞うことや、急に涙が溢れて止まらなくなることもあったのです。

そういう自分が嫌で、担当していたヨガクラス以外にも代行を積極的に引き受け、空き時間は練習を欠かさず行うようになっていきました。

ヨガに触れている間は、乳がんのことを考えることなどありません。ヨガの呼吸法で、気持ちは落ち着いて穏やかな自分に気づくことができました。何より、ヨガが楽しくて仕方なかったのです。

そうしているうちに、入院までの時間を楽しんでしまおうか、とアイデアが浮かんできました。まるで初めて海外旅行をしたときのように、約2週間の〝お泊まりグッズ買い物リスト〟を作成して、買い物をしてはニヤケながらリストにチェックしました。

「今の自分は、乳がんになってしまったけど、こうやってヨガと買い物を楽しんでいるではないですか!」

以前、ヨガセラピーの授業で学んだマインドフルネスの「今、ここ」に気づけた瞬間だったのです。

乳がんによって、まだどうなるかわからない未来を心配して過ごす時間も、好きなヨガをしながら楽しいことを考えて過ごす時間も、同じように過ぎていきます。だったら楽しい時間だけを過ごせばいいと思うのに、私の心は乳がんのことを考えまいとしても浮かんできます。心に浮かんでしまうなら無理に消すことはない、不安を感じてしまうのも楽しいことを考えるのも今の自分だから、それはそれでいいということにしてしまいました。

心に浮かんでしまうことを無理に消さなくていい

ヨガに限らず、好きなことをやっていると気分が少し変化します。不安に圧倒されそうなときも、好きなことに集中していると、その瞬間は少しリラックスできます。あるがんサバイバーは〝ナンクロ〟というクイズで乗り切ったといいます。

ヨガが好きな人たちは、ストレスから一時避難するためにヨガを用います。ヨガは畳1畳あれば1人でできます。呼吸法ならどこにいてもやれます。こういう〝避難所〟を内側に持っていることは有難いことです。

けれども当然ですが、目が覚めている間ずっとヨガしているわけにはいきません。ところが、あるときふっと、「心に浮かんでしまうなら無理に消すことはない、不安を感じてしまうのも楽しいことを考えるのも今の自分だから、それはそれでいい」という気づきに至るのです。これがマインドフルネスの効果です。

さて今月はバランス系のポーズを紹介しましょう。バランスを保とうとすると自然と「今この瞬間」に意識集中することが求められます。

<背中で足をつかむポーズ>

背中で足をつかむポーズ1

①両手を腰に当て、両足をそろえて立つ。目線は前方1点を眺める。呼吸は自然呼吸のままで

背中で足をつかむポーズ2

②両膝はそろえたまま、右足の膝から下を曲げる

背中で足をつかむポーズ3

③両手で右足をつかみ、肩甲骨を寄せるようにしながら、踵を尻に引きつける。そのまま4~8呼吸この姿勢を保つ

①に戻し呼吸を整え、左右の足を交代して行う

 

シノハラリエ ヨガセラピスト/ヨガインストラクター
こころとからだクリニカセンターで、がんサバイバーのためのヨガクラス(50分のヨガセッション+自由参加のランチ>第1/第3火曜日・昼12時から)を担当。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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