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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第8回 シノリエさんの場合――その2 <両腕を上げるポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2019年1月
更新:2019年1月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

私が主宰する「こころとからだクリニカセンター」で、がんサバイバーのためのヨガを指導しているシノリエさん。ご自身もがんサバイバーですが、マインドフルネス・ヨガについてのエッセイを寄稿してくれました。

今回は後編を紹介しましょう。

「ヨガでストレスがなくなるなら、抗がん薬はとっておこう」

乳がんの治療は長いです。日本人女性の乳がんは、ホルモン受容体陽性(ER+)タイプが約7割を占めると言われ、その場合の治療は、化学療法や放射線以外にホルモン療法を5~10年となっています。私の乳がんはホルモン療法が10年、年1回の検査で経過を10年診てくれると言われました。

術後に治療方針が決まったとき、腋窩(えきか)リンパ節転移あり、ホルモン受容体ルミナルBの標準治療は、化学療法+ホルモン療法となっていました。化学療法とはいわゆる抗がん薬のことで、乳がん治療の場合、代表的な副作用に脱毛があります。

私は、1日も早くヨガインストラクターに復帰したいと思っていました。しかし、脱毛してウイッグを着用している自分を想像すると、頭を下げるポーズの際にポトリと落ちてしまう光景がどうしても頭に浮かんでしまうのでした。

とても耐えられない……。結局、抗がん薬を拒否してホルモン療法のみを選択したのです。そんな私に、主治医がかけてくれた言葉は今でも忘れられません。

「抗がん薬はがん細胞以外に、正常な細胞まで殺してしまうほど強い薬。本当は血液に乗って、全身に回っているかもしれないがん細胞を叩いてゼロにする治療にしたいところだけど、もしかすると、1日1回でも自分が笑っていることに気づいたほうが、どんなに強い薬を使うより効くかもしれない。ヨガをやることでストレスがなくなるなら、抗がん薬はいつかのためにとっておこう」

そう言ってくれたのです。

術後1年ほど経過したころの診察で、「最近、ヨガはどう?」と聞かれました。

「今までは、できていたブリッジ(アーチのポーズとも呼びます)ができなくなってしまいました。傷が突っ張って、肘がうまく伸びてくれないのです」

その言葉に対して「傷はもう開くことはないから、思い切って肘を伸ばしてごらんよ。筋肉は傷ついちゃうかもしれないけど、筋肉なら再生されるから大丈夫。ああ、そうするとしばらくヨガができなくなっちゃうか」

こんな大胆な発言をする主治医がいるでしょうか。今の時代、何かあれば病院を訴えようとするモンスターペイシェントが医療の現場でも増えていると聞きます。余計なことを言わない風潮の中、表現が大胆であろうが、しっかりと患者に向き合ってくれる主治医です。

「大人なんだから加減ってわかるよね」

ふと主治医の言葉を思い出しながら気づいたことがあります。私は、なぜヨガにこだわっていたのでしょう。乳がんが発覚したとき、ヨガができなくなることが怖くて、そのために抗がん薬を拒否し、今こうしてヨガを続けています。

主治医の「思い切ってやってごらんよ」という言葉を聞いて、ポーズができないことを乳がんのせいにしている自分に気づいたのです。ポーズができるということがヨガなわけではありません。私は乳がんが発覚したときに、ヨガで落ち着きを取り戻せたし、そのときの自分を受け入れることができました。私にとってヨガは、今の自分を受け入れるために必要なものに思えます。

ブリッジができなければヨガではない、そんなことあるわけないのです。けれど、思い切ってポーズにチャレンジすることもまた必要かもしれません。

〝今〟を受け入れて、積み重ねた先に未来がある、未来の結果は気にせず、まだまだ治療が続く乳がんとヨガで、自分の何かに気づけたらそれでいい、そう思えたのです。

主治医が診察の最後につけ加えた言葉があります。

「リンパ節を取ってしまったから、ブリッジを無理してやるとリンパ浮腫になる可能性もあるので、少しむくみ(浮腫)を感じたらすぐに止めること。大人なんだから加減ってわかるよね」

この言葉に、私はドキッとしました。私は加減というものが、わかっているんだかいないんだか、〝思い〟ばかりで突っ走っていく自分には、〝今ここ〟に自分を留めてくれる何かを必要としていることに、改めて気づかされます。

〝加減〟は厳密に考えなくていい

大人だけど、私たちはともすれば〝加減〟がわからなくなります。というか〝加減〟は、やり過ぎたり、やらなさ過ぎたりの試行錯誤というプロセスの中で体得できていくものです。しかも、昨日の〝いい加減〟と今日の〝いい加減〟は微妙に違っている。だからそのときどきで、加えたり減らたりしていけばいい。あんまり厳密に考えなくていいのです。

さて、今月のポーズは<両腕を上げるポーズ>です。

腋窩リンパ節を郭清した場合、腕はそのままでは上に挙げにくくなります。

そうでなくても年齢とともに肩甲骨の柔軟性が減って、腕は上にすっと上がらない人がほとんどです。このポーズは、今日の一番上がるところまで丁寧に両腕を上げていくポーズです。

そして今日はここまでくらいかなと、受け入れます。

「前はもっと上がったのに、ですって?」そうかもしれません。今、腕を上げようとしていた瞬間に、少し痛みを感じて、そんな考えが浮かんだのではないでしょうか。

前回話したように、フッとわく思考について、「~と今思った」をつけ加えてみましょう。「前はもっと上がったのに、と今思った」のですね。それはそれとして、今この瞬間に自分の左右の腕を上げていく過程でどんな感覚が引き起こされるのか、内部感覚に注意を向けながら行います。

<両腕を上げるポーズ>

両腕を上げるポーズ1

①両足を腰幅に開いて立つ。両手は脇線に沿って、すーっと下に下げ、肩を軽く下げる

両腕を上げるポーズ2

②息を吐いて、吸う息でゆったりと両腕を水平に上げる。両腕を水平に上げるだけでも、肩や首に力が入ったりする。右手は右の方向に指先が伸ばされていくような感じ、左手も同様に。肩をリラックスさせて、幾分肩を沈めるようにすると2㎝くらいリーチが伸びる。そのまま4自然呼吸キープ。この姿勢では胸も開いているので、胸を反らす必要はない

両腕を上げるポーズ3

③手のひらを上に向ける

両腕を上げるポーズ4

④とてもゆっくり両手を上方に上げていく。どちらか一方の腕が上がりにくかったら、今一番上げられるところまで。左右が均等でなくてよい。4呼吸キープ。2セット。ゆっくりと戻し、呼吸を整えながら体の内側に広がっている余韻を味わう。とくに何も感じなくても、それもそのまま受け止める

 

シノハラリエ ヨガセラピスト/ヨガインストラクター
こころとからだクリニカセンターで、がんサバイバーのためのヨガクラス(50分のヨガセッション+自由参加のランチ>第1/第3火曜日・昼12時から)を担当。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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