マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第15回 足指の自由度を拡げよう <足指じゃんけん>
以前、南インドに30年以上暮らしている友人のところに遊びに行ったときのこと。彼女は素敵なパンジャブスーツを何着か用意していて、「よかったら着てみて。これもインド体験だから」と言うのでした。
膝(ひざ)下まであるロング丈の上着とパンツ、それに幅広の丈の長いショールがセットになっています。生地から仕立てた飛び切りの品で、どれも薄手の上等なコットンで肌触りもしなやか。そういう生地を扱うお店に連れて行ってもらったときは、それはもう夢心地でした。イカット(絣織物)‼︎などを手織りしている村(どんどん少なくなっているそうだ)まで直接出向き、仕入れてくるのだと店の主人は胸を張ります。
天竺へのあこがれ
木綿が庶民の日常着として日本に普及するのは江戸時代です。麻と比べ、やわらかく暖かく、扱いやすいのです。綿入れなんていうものも、木綿だからこそ可能になったものでした。綿花栽培の技術は特別なもので、藩外に持ち出すことは固く禁じられていたそうですが、江戸中期には全国的に普及しています。それほど人々に求められたのです。そして明治になり、安価な綿糸が輸入されるようになると、瞬く間に日本の綿花栽培は消えていきます。
ところで縞(しま)という言葉ですが、絹のように細くて光沢のある綿織物はインドでつくられ、海を渡ってインドシナの島々に渡り、そこから日本に入ってきました。縞模様の「縞」は遠い「島」から渡ってきたものという意味だったそうです。当時、日本には藍でしか染める技術がなかった木綿が、インドではすでに多彩に染められてもいました。江戸初期、歌舞伎役者が描かれた錦絵。彼が羽織っている羽織がその島渡りの縞柄で、当時はストライプのことを「島模様」と表記していました。
南インドのマドラスあたりから出港した綿織物が、島を伝って海を渡って、はるばる江戸まで入ってきていた。そのことに思いを馳(は)せると、ある意味、インド(天竺)は現代よりずっと身近かったのかもしれないと思うのです。
インドから帰国後、着物にはまる
その彼女が、「サリー、着てみる? 着せてあげるよ」と言ってくれたのでした。
しかし、「ちょっと待て‼︎」と抵抗する私がいました。その当時、浴衣以上の着物を自分で着たことがなかったのです。それなのにサリーを着るのは順序が違うと、思ったのでした。
帰国から間もなく、着物を仕立てました。
その1枚の小紋から着物にすっかりはまるのですが、何が驚いたかって、着物が体に(心にも)、とっても楽だということでした。50歳を過ぎて、それまで自分の中に眠っていた母や祖母や曽祖母(もっと前)から蓄えてきた体の記憶に目覚めたとでも言いましょうか。
足袋に草履というのが、合わない靴に泣かされてきた身にはこんなに楽だったのかと涙が出ます。腰にぴったり巻き付ける着物の着付け、腰ひもや帯などで腰をしっかり支えているせいか、歩く動作の安定感が格段に高まり。パンツスタイルより、すたすた軽快なロコモーションができるから不思議です。紐や伊達締めや帯や帯締めで胴回りを、しっかり巻いて、お腹が冷えないのもうれしい。暑いときも顔がそんなに熱くならない。何よりブラジャーをしなくていいという開放感。などなど気づいたことを書きはじめたら数限りなくあります。
ま、ヨガのポーズ法の一部を行うにはあまりふさわしくないことは認めましょう。しかし、もともとは日常着として身に着けたものなので、窮屈なものであるはずがありません。確かに格式のあるゴージャスな着物を、専門の人に着付けてもらう装い方もありますが、それは特別なよそ行きの場面でのこと。普段は、ちょっとしたよそ行きも含めて、傍で見るよりずっと自然で理にかなっています。
足指はもっと丁寧に扱われるべし!
これはヨガにも通底することですが、足の取り扱いが健康的です。何より親指と2番目の足指との間に鼻緒が来るというのが、足の健康に貢献しています。足を踏みしめるときも、足指1本1本の感覚が鮮明です。
足指を意識的に動かすことで足底筋や足底筋膜が刺激され、足底の3つのアーチが鍛えられます。3つのアーチとは一番大きなアーチである内側縦アーチ〈土踏まずのことです〉、外からは見えにくいけど足をしっかり支えている外側縦アーチ、そして横にドーム型に走る横アーチです。
「老化は足から始まる」ことはよく知られていますが、足指については少々無頓着であるように思われます。だからと言って足指の重要性に変わりはありません。足指ひいては足底の強さ滑らかさは全身の健康、脳の活性化とも密接に関係しています。
そこで、足指の1本1本を意識的に動かす足指じゃんけんを紹介しましょう。
<足指じゃんけん>
腰を下ろし、左右別々に行ってみよう。椅子に腰かけた姿勢で行ってももちろんOK。足指の1本1本がどういうふうに動くか、1本1本をしっかり意識して行うことが大切。またそのとき、足底はどのように感じるか、攣(つ)りそうになったりしているところはあるか、今この瞬間に起きていることを丁寧に観察しながらやってみよう。自然呼吸で5秒キープ。
①5本の指を内側に丸める。親指、人差し指、中指、薬指、小指、と1本1本を意識して丸める。
②親指を手前に起こし、他の4本は向こうに伸ばす。はじめできなくても、手の助けを借りてもよい。やがて、親指だけ手前に起こすことができるようになる。他の4本も1本1本に意識して、語りかけるようにやってみよう。
③足指の1本1本を開く。最初はなかなか開かない。とくに中指と薬指の間は開きにくいが、ゆっくりやって行こう。
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
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