マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第21回 「ため息」でマインドフルネス② <仰臥で行うヤシの木のポーズ>
前号「ため息」でマインドフルネス①では、どちらかというとネガティブ・イメージのある「ため息」について取り上げ、ため息は思わず〝ついて〟しまうものであるけれど、ため息していると気づいたとき、今、自分がどんな呼吸をしたのか、その瞬間どんなことが頭をよぎったのかを少し振り変えってみること、そして次に意識的にため息をついてみることを提案しました。
どうでしたか? 実際にやってみましたか? たいていの人はスルーしたことでしょう。
普通にため息をしていても、頻度が少なければ本人も周りもさぼどに気にしません。でも気がかりなことがあったり、強いプレッシャーを感じることがあると、ため息は確実に増えます。
家族や同僚や親しい人から「どうしたの、ため息なんかついて」と聞かれたり、けげんな顔をされて、初めて自分がため息をしていることに気づかされるということもあります。つまり、自分のため息よりも他人のため息のほうが結構気になるものなのですね。
ため息マインドフルネスで気づいたこと
「ため息」というのは1つの呼吸法なのです。
その瞬間は心身がそれを必要とし、慣れ親しんだ習慣的方法なので、半ば無意識的にため息を行っているわけです。
でも、それを自覚して、意識的に繊細に行うと、つまりマインドフルに行ってみると、不思議なことにだんだんと自分に対してのいたわりの気持ちが芽生えてきます。
U子さん(52歳)は乳がんの手術から2年後、全摘した右側の肩にかけて少し違和感があり、転移がわかりました。
治療は主治医と話し合って決めて、その後も継続して治療を行ってきました。
U子さんは、あんまり調子よくないと感じると、思わず「ため息している」のだそうです。もう一度、今度は意識的にため息を行ってみると、その瞬間、主治医の言った言葉が頭をよぎることに気づきました。そしてもう一度意識的にため息することで、「先生が言われたのは、どういう意味ですか?」と、今度聞いてみようというアイディアが浮かんできたそうです。
「前だったら、ため息ばかりついて、家族に心配かけて……とか、今できることをしなくちゃいけないのに……とか考えて、またため息。落ち込んでいました。でも、ため息する自分のその瞬間に注意を払うことで、自分に対して少し優しい気持ちになっているんですよね。そうかそうか、こんなことでザワザワしていたんだ……そうだよね、ザワザワするよねって」
自分に対しての肯定感といたわりの気持ちが湧いてきたこと、それが大きな成果でした。
すると、それは普段の呼吸にも反映され、自然と呼吸が深くなっていることにも気づかされました。
「今できることをしなくちゃと頭で考えて、身体はそれについていけなくて、ダメだなあ、ダメだなあと落ち込んで行くとき、わたし、呼吸止めてる! って気づきました」
呼吸が浅くなりがちな現代人
頸肩(けいけん)周辺の筋肉が固くなっている人は、呼吸の仕方によって身体のどの部位がどう使われるのか観察するなどの繊細な作業が苦手です。そもそも頸肩が凝っていても凝りを感じてないケースさえあります。
スマホが欠かせない時代で、仕事や人間関係で1日に3~4時間もスマホの操作に時間を使っていて、首の付け根や背中や肩の凝りが慢性化しています。すると、胸周りの筋肉も柔軟性が低下し、呼吸が浅くなりがちです。
肩周りの靭帯(じんたい)や筋肉、首や胸の柔軟性を高めると、姿勢も整い、呼吸も楽になってきます。
前号では<椅子で行うヤシの木のポーズ>を紹介しましたが、<ヤシの木のポーズ>はもともと立位姿勢で行います。今回はなんと仰向けに寝て、両膝(ひざ)を立てた姿勢で行います。そうすることで背中、とくに肩甲骨(けんこうこつ)と肩をリラックスさせながら腕を動かすという動作を行うことができます。肩の可動域が飛躍的に高まります。
注意を払うのは、体操などのトレーニングのように動作を機械的に10回20回とやる必要はないということです。
それよりも呼吸と共にゆっくり動作し、その動作とともに、どの部位の筋肉が使われているのか、不要な部位に緊張が起こらないように、筋肉感覚をはじめ内部感覚にマインドフルネスでいることを重視します。
左右の腕の動きに差があっても、同じように動かそうとしないで、それぞれ無理のない動きにしましょう。
<仰臥で行うヤシの木のポーズ>
①仰向けに寝て、両膝を立てる。両足、両膝は腰幅に開く。両腕は体側に沿って手のひら側を内側に向けて緩やかに伸ばす。
②穏やかに息を吸いながらゆっくり、腕が床と垂直になるところまで上げて、そのまま自然呼吸3回。背中が縦方向にも横方向にも広くゆったりとリラックスしているとイメージしながら行う。
③穏やかに息を吸いながら腕を頭のほうに伸ばしていく。このとき、肘も手首も床につかないように柔らかく伸ばす、自然呼吸3回。
④穏やかに息を吐きながら、腕を左右にゆっくり分け開き、肩の位置まで来たところで3回自然呼吸。肘や手首は床につけないようにして保つ。ここではとくに背中が縮みやすいので、背中が縦方向にも横方向にも広い、左右の肩甲骨の間を緩めるということに注意を払おうゆっくり息を吐きながら①に戻す。
今度は左腕だけ同様に。次いで右腕だけ同様に。最後にもう一度両腕で行なう。
*④は両腕を開くので場所が取れないこともある。その場合は①→②→③→②→①で行なう。
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