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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第41回 聴くチカラ <パドハ/制感のポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2021年10月
更新:2021年10月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

国立や私立の有名小学校入学の試験問題はどういうものか。娘を小学受験のため予備校に通わせている方から話を聞いて、なるほどと思いました。

まだ就学前なので、文字は読めない、書けないという前提で問題はつくられます。そのため5、6歳の受験生を前に、教師が問題をただ1度だけ朗読します。それを聞いて、答案用紙に絵や記号を使った複数の選択肢から正解を選び、○を書き込むのです。

ネットなどで紹介されている例題を見ると、大人にとっても難解なものが少なくありません。大人は紹介記事の文章を読んで理解しますが、耳で聞くだけで答えられるか、とても自信がありません。

コロナ禍なので、その方は子どもと一緒にリモートで参加。

問題を聞いて理解して記憶して答えを出していくとき、「こういう頭の使い方って、久しくしてなかったことに気づきました。ふつう情報は、基本的に目で文字を追って理解しますよね。ところが、読み上げられる例文を耳で聞くだけで理解し、記憶する作業は子どものとき以来かしら。なつかしいだけではなくて、わくわくしてきたんですよ」とおっしゃる。

例えば、「白うさぎさんが森に出かけました。森の入り口には真っ赤な野バラのアーチがありました。それをくぐって少し歩くと道が2つに分れています。どちらに行こうか迷っていると、左の道からヤギさんが現れ、尾尻でこっちにおいでと合図するのでした。その道を進むと、ヤギさんはどんどん先を行き、遅れるまいと急ぎ足でついていったら、小さな石につまずいて転んでしまいました。痛くって心細くって、涙が出て来ました。するとそばの草むらからカエル君が顔をのぞかせました」といった具合に物語が3~4分ほどすすみ、それから先生は質問します。

「さて、森のお散歩で白うさぎさんが3番目に出会ったのはだれだったでしょう? 4つの絵から1つ選び、○で囲みます」

1回の朗読を集中して聞き、理解し、記憶し、答える。もちろんメモを取ることはできません。聞き直すこともできません。

この話を聞いて、わたしたちの日々の生活が異様なくらい視覚に頼っていること、文字に頼っていることに気づかされました。

動画やTVで歌手が歌っているシーンでも、たいてい字幕で歌詞が表示されます。言葉が聞き取れなくとも文字が補ってくれます。字幕が前提で作られているような歌詞もありますね。歌を聞かせようという気が乏しいというか、最初に曲が決まっていて、それに沿って日本語を埋めている。

昭和歌謡は聞いているだけで情景が浮かびます。日本語の抑揚に沿ったメロディになっていました。J-POPだって、今聞くと言葉が鮮やかです。

聴いて情景が浮かぶ

病院ではベッド1台につきテレビ1台が一般的ですが、個室でない限り音はイヤホン使用がルールです。横になっている時間が多いと、テレビを視るより聴くようになります。しかし、テレビは画像を前提にしているので、聴くだけでは内容がよくわからないから、だんだんとラジオのほうが馴染んできます。ラジオだって放送する側は原稿を見ながら、即興を交えて話すのでしょう。

こんなふうに考えていくと、話はすごく飛ぶけれど、稗田阿礼(ひえだのあれ)ってすごいと感動します。

「古事記」はいくつもの物語が編纂されてまとめられたものだそうですが、それらの物語は語り部が声で語ることによって伝承されてきたものです。100年も200年も、どれくらいの歳月伝承されてきたのかわかりませんが、彼らは一族や民族の歴史の記憶を保存するための特別の技能を持っていて、それをいつでも再現して人々に伝えることができました。

文字のない時代、そのように語られる物語に耳を傾けるとき、語る人も聴く人も、その物語を初めて体験するかのように、その物語をその瞬間瞬間、生きたのだろうなと思うのです。

子どもは、絵本を何度も何度も読んで聞かせてとせがみます。もう完全に記憶しているはずなのに。その証拠に少しでも読み間違えると、「違う」と指摘します。それなのに、繰り返し巻き返しその物語をせがみます。あの飽きない能力、初めて体験するようにその物語を繰り返し体験する能力。大人になると失う能力の1つです。

子どもは、そのままでマインドフルネスを実践しています。

瞼を閉じて、そっと耳を塞ぐ

さて今月は、外から流れ込む感覚情報を一時的に閉じる方法<パドハ/制感のポーズ>を紹介します。とくに耳の疲れに効果的です。目が疲れたら、目を閉じて休ませることができますが、目を閉じるようには耳は閉じられません。安全なやり方で聴覚を塞ぎ、耳を休ませましょう。

<パドハ/制感のポーズ>

①マットに腰をおろします。正座でも安座でも安定した楽な姿勢の座り方なら、どんな坐り方でもOK。椅子に腰かけた姿勢でも大丈夫。どっしり坐り、脊柱をすーっと伸ばします
②耳の穴の縁から〝半島〟のような穴の方向に出っ張っている部分、耳珠(じじゅ)というのですが、そこを親指で軽く耳穴に向けて塞ぎます
③人差し指で瞼を軽く押さえ、
④中指で小鼻の脇を押さえます。中指の動かし方で息の通りを調整できます
⑤薬指と小指は口角を挟むようにおきます
⑥肘を横に拡げ、親指でしっかり耳を塞ぎ、そのまま8呼吸。内側の音に注意を向けます
⑦ゆっくり緩めて、両手を膝に伸ばし呼吸を整えます

<パドハ/制感のポーズ>は仰臥し、両膝を立てて行っても気持ちよいものです。最後に「完全なくつろぎのポーズ」で休息します。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
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携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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