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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第64回 なるほどなるほど<尻で立つバランスのポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2023年9月
更新:2023年9月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

「ヘルプカード」を身に着けた人を見かけることが珍しくなくなってきました。

ヘルプカードというのは、名刺くらいの大きさの赤のプラスチックカードに白抜きで十字とハートマークが印されたカードで、結構目立ちます。むしろ目立たないと意味がありません。援助や配慮を必要としている方々が、そのことを周囲の方に知らせるカードだからです。

「Give me the seat」

あるとき、私は電車内のシルバーシートに座っていました。3人掛けで左右は若い人でした。

そこにヘルプカードをバックにつけた60歳くらいの女性が乗ってきました。左右のどちらも立つ気配がないので、あまり考えることなく私は立ち上がりました。

するとその女性はにっこり、はきはきと「あなたは席を立つ必要はありません」

そして、それまで一心不乱にスマホを操作していた左隣の若者(多分ふと目を上げたのでしょうね)の目を見て言いました、1語1語はっきりと。

「Give me the seat」

青年はすっと席を立ち、女性はいとも自然にその席に座りました。

「なるほどなぁ」。私は感心しました。

あの瞬間、私は「まだ元気だし」の気分でした。だから立ったのでした。

ところが、客観的に見て、私の外見はシルバーシートにふさわしかったわけで、これが第1のなるほど。

第2のなるほどは、援助や配慮が必要なときには、こういう声のかけ方があるのを知ったこと。〝英語で〟というのが新鮮でした。ストレートで嫌みがありません。

第3は席を譲った若者も、実に自然でした。声をかける方も席を立つ方も、物おじせずぶっきらぼうでもなく、また特段ににこやかでもなく、自然体でした。

こうあってほしいというような一幕でした。

スマホが顔認証で開かない⁈

先日、スマホを買い換えました。
顔認証とパスコードのどちらでも使える設定にしました。

ところが、顔認証ではなかなか開かないのです。何度か試して、もしかしたらと思い、口角を上げ、頬骨を少し盛り上げて、ちょっとだけ微笑んだら、案の定です。さっと開くのです。意識してないときの自分の顔では、私のスマホは私だと「認証」してくれない(笑)。

なるほどなるほど。

ふつうにしているときの顔と、人とコミュニケーションしているときの顔は、歳を取ってくるとその差が大きくなります。

エレベータで中年以上の男性と乗り合わせ、あまり機嫌が良くなさそう、というか怖そうなので少し距離を置きたいと思っていた方が、ちょっとした会話、「まだ暑いですねえ」「ほんといつになったら秋になるのでしょうね」くらいの会話でも、話すとすごくチャーミングな笑顔になるのでびっくりすることがあります。

私だってそう。店員にちょっと質問するのでも、意識して少し口角を上げて話しかけます。そうでないと「あっ、クレームでも言ってくるのか」と身構えられてしまうことが何度かあったからでした。

さり気ない気遣い〝感情労働〟

ヨガで深くリラックスすると、逆にふだんの緊張に気づかされることがよくあります。

メンタル面でもフィジカル面でもです。

考えてみれば若い女でも(最近は男も)、感じよさそうという程度の笑みを心がけていています。そういうさり気ない気遣いを〝感情労働〟というのだそうです。いくら頑張っても報酬になるわけでもなく、当たり前なこととして暗に求められます。

「鼻の下を伸ばした~い。顔の下半分を下にだらんと伸ばした~い」と、ある接客業の女性。

意味がとっさにわかりません。

「わたしたちは、接客中はずーっと顔の上方に縮めるように指導されます。口角を上に、ほっぺたも上に盛り上げ、上唇を鼻のほうに上げて、鼻の下に横じわが1本にできるくらい縮めて」

それで、「鼻の下を伸ばしたい。顔面を下にだらんと伸ばしたい」となるわけ、なるほどねえ。

好印象を保つために顔面を上方に引き上げ続けるというのも、やりすぎはつらい。

年齢とともに顔面が下方に弛緩しがちで、本人的には全然不機嫌でないのに、不機嫌に見えてしまうのも悲しい。要はバランスですね。

今回は<尻で立つバランスのポーズ>を紹介します。
バランスを取ろうとして力が入るとうまく行きません。
ほんの少しにっこり・にんまりする気持ちで行います。

自身もがんサバイバーで、がんサバイバーのための「ヨガとトーク会」を担当している栗木登志子さんにインストラクションをお願いしました。

<尻で立つバランスのポーズ>

 

①マットに両脚を前に伸ばして長座します。背筋をすっと伸ばし、手は腰の横につきます
②両膝を浮かします
③お腹から力を抜かないように留意して、ゆっくり下腿を引き上げます
④背中は軽く後方に引いてバランスを取ります。肛門を軽く閉じ、両座骨は近づき、尻ですっと立つというイメージです。両手は軽くふくらはぎを下から支えてもいいし、右手で右膝、左手で左膝を下から持ってもいい(今回は膝下で軽く手を組みます)。両腕を下腿部に沿って前に伸ばすと、よりバランス力と大腿部の筋力が求められる上級篇です。肩はリラックス、脊柱をすっと伸ばします。
そのままらくな呼吸を6~10呼吸続けます
⑤ゆっくり①に戻し、呼吸を整えてもう1セット

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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