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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第65回 うずくまる、伸びる<平伏のポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2023年10月
更新:2023年10月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

「ああ、これだと思ったわ」

初めてヨガをしたときの母の第一声でした。
「今まで伸ばされたことのないとこがぐーっと伸びて……、肩がらくになってきたのよ」

それが今月取り上げる<平伏のポーズ>です。

自分流儀のヨガを通した母

彼女は68歳でヨガを始めました。今の私より若いけれど、当時の私の生徒たちの中では最年長でした。

正座すると膝がつらいと、座布団をうまくお尻に当ててやっていました。身体はどこがどうなっているのか、左右の肩も骨盤も傾いていて、しかも微妙にねじれています。だけど「気持ちいいわ」と、頑固なまでに自分流儀のヨガでした。

母は若い時分からたびたび肩こりに悩まされ、子どもたちによく肩たたきを頼んでいました。揉んだり指圧したり、やっている側の手指がおかしくなりそうでした。

当然のことながら、肩こり用のシップ薬はうちの常備品でした。

肩こりがひどくなると頭痛にエスカレートし、強力な頭痛薬を飲み、仮眠をとっていました。治るとけろっとしたものでした。

別に大きな病気が隠れているのでもなく、94歳まで健在でした。

ヨガは身体にも心にもいいはず……

実は、私もよく肩がこっていました。私だけではなく、日本女性のストレス症状の中で断トツ1位が肩こりです。外国には肩こりに相当する言葉がないそうです。

肩こり症の原因の1つになで肩もあげられますが、私の場合は日常のいろいろな局面ですぐ肩に力が入るからでした。

ヨガのポーズをやっていても、気持ちいいポーズもあるけど、力ずくでやっていたようなポーズもありました。だからヨガで首や肩がこるなんてこともよくありました。

当時のヨガティーチャーに意見を求めると、
「好転反応ですから心配ありません」
〝好転反応〟という、わかったようなわからないような言葉がはやっていました。
「ヨガは身体にも心にもいいはず」と、教える側も教わる側も思い込んでいたのでした。
でも身体の感受性は正直だから、痛い・つらいはやっぱり嫌です。がまんしてやろうと思っても、がまんできない。

気持ちがいいのが一番、そうでなかったらどこかしら無理をしている。やっていて「気持ち良くないのだったら、やらなくていい」と、確信を持って言えるようになるまで3年かかりました。

なんで自分にとってこのポーズは気持ちいいのに、別の人にとっては違うのか。そこを丁寧に分け入っていくと、だんだんわかってくるのです。そういう面白がり方がわかってくるのにまた2~3年かかりました。

人の身体はそれこそダイバーシティですが、その人の身体の動きを見ているだけで、「ここがなんだか不自然なんだけど」と、訴えているのがわかるようになります。なので、ほんの少し意識の向け方を変えるだけで、「ああ、気持ちいいね」となるのですね。自分でもわかるようになります。

母の頑固なまでの自分流なやり方というのにも驚きました。

「こうやります」とやって見せても、自分流の変形したポーズでしかやりません。「どうしてそうなるかな」と思って真似てやってみると、なるほど「こう解釈してたのか」と発見があります。

「そうか、それで気持ちがいいのだったら、それでいいんだ」と納得。

ヨガは民間療法⁈

この前、ある番組で乳がんの標準治療を取り上げているときに、そのドクターは「やはり標準治療をおさえておくことは重要です。食事療法やヨガなどの民間療法に頼りすぎるのは……」と、解説されていました。

ヨガを民間療法として、がんの治療に用いる人がいるとはにわかには信じがたい。何か言葉の行き違いがあるのではないかと想像します。

けれども標準治療を行いながら、ちっとも意のままにならないけれど、自分のこころとからだとつき合う手立てとして、ヨガはなかなか味わい深いとは思う。

そのなかでシンプルだけど、奥が深いなあと感心するのがこの<平伏のポーズ>です。
難易度の高いポーズは、奥が深いと思えるくらい長々やってしみじみ味わうところまでやりきれません。
40肩や50肩の場合、腕を前に伸ばすのが難しいかもしれません。痛みなくやれるところまで伸ばします。

後半の「もう一度パート1」では、腰仙骨に比重を置きます。腰やお腹が温かく感じたら、コツがつかめたのではないでしょうか。
〝うずくまる〟と〝伸びる〟が共存します。

<平伏のポーズ>

 

パート1
①正座して、膝の両脇の床(マット)に両手をおきます
②息を吐きながら尻をぐっと下のほうに下げ、
③吸う息で頭のてっぺんの方向に背中を伸ばします
④息を吐きながら両手を前方に伸ばしていきます。尻は浮かせるのではなく、下方に下げたまま両腕を前方へ
⑤首の力を抜き、肩を沈めて、らくな呼吸を続けながらこの姿勢をキープします
⑥ゆっくり戻して正座で呼吸を整えます

パート2
①正座して左膝の左側のマットに両手手首を合わせ、右手を前に左手を後ろに置く
②息を吐きながら尻をぐっと下に下げ、
③吸う息で頭のてっぺんの方向に背中を伸ばします
④息を吐きながら右手を前方へ左手を後方に前後に開きながら上体をゆっくり前に倒します。右体側が伸ばされます。右の腰が浮きやすいので、気をつけましょう
⑤ゆっくり上体を起こしてから、こんどは左右を反対にして同様に行います

もう一度パート1
①今度は腰部から仙骨、肛門に意識を向けて行います
②息を吐きながら尻をぐっと下のほうに下げ、
③吸う息で頭のてっぺんの方向に背中を伸ばします
④息を吐きながら両手を前方に伸ばしていきますが、それはほどほどにして、今度は肛門を閉じ、尻を丸め、エビが尻を丸めて後ずさるようなイメージ。下腹部が閉じられ、そのまま自然呼吸でキープします
⑤ゆっくり戻します。呼吸を整えていると腰部が温かく骨盤内の血流が感じられるかもしれません。正座を崩して、安座や足を投げ出して余韻を味わってください

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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