肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 5

義母の治療情報を知りたいが、個人情報を理由に教えてくれない

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2009年12月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


74歳の義母が、大腸がんになりました。夫が他界しており、義母と同居していません。義父も亡くなっており、義母は地方で1人暮らしです。治療の説明に同席したいと思い、病院に連絡をしましたが「個人情報」を理由に説明をしてくれません。義理の嫁では、治療情報を教えてはくれないのでしょうか?(50代、女性)

病院の治療説明に同席できるよう、まずはお義母さんを説得しましょう

基本 CMYK個人情報保護法では、<個人情報取扱業者(病院もそうです)は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない>と定められています。ただ、<人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき>はその例外とされています。 この規定によって、病院は患者本人以外誰にも情報開示しないのが普通です。あなたが実の娘であれ、義理の間柄であれ、病院にいきなり問い合わせても病院は答えてくれません。

ただ医療機関では、このように、<患者のプライバシー保護>という責務があると同時に、もう一方においてはインフォームド・コンセント(症状や治療方法を説明し、患者の同意を得る)を行う責務があります。

医師側でこの患者にはこの治療が絶対必要だと考えても患者本人の同意がない限り、独断で治療することはできません。例えば、かつて宗教上の理由から輸血を受けないという信念を持っている患者に対して輸血をしていいかどうかが争いになったことがありました。その場合も患者の意思優先で、結局輸血はできませんでした。

ですから医師は、常に患者が自分の病状を理解し、治療方法に納得しているかどうかを気にかけています。

ふつう、そのインフォームド・コンセントは本人と家族(家族の中でも配偶者、両親、成人した子ども、嫁などキーパーソンになっている人)とが同席の上で行っています。ただし、家族が居ない場合、居ても本人が誰にも病状を告知しないでほしいと希望する場合には本人に対してだけ行うということもときにはあります。

逆に、本人が高齢で理解力に乏しいというようなときには本人に代わって家族だけが受けることもあります。また進行がんについては今後重篤な症状に陥る危険 性もありますから、その場合は緊急手術とか輸血など、ややリスキーな治療もせざるを得ないでしょう。その際に本人に代わって承諾してくれる家族を確保して おくことは、医師にとっても是非必要です。ですから、病院側は、あなたに直接お義母さんの病状を話す訳にはいかないものの、治療方針の説明の際にはお義母 さんだけでなく、あなたにも一緒に立ち会ってほしいと思っている筈です。

ここは、あなたから医師の治療説明に同席できるよう、お義母さんを説得してみてください。

担当医師(又は看護師)にも、協力してもらえるかもしれません。

地方で1人暮らしをなさっているお義母さんが、病を得て入院なさるというのは、さぞお淋しいことだろうと思います。まずは出掛けて行って、お義母さんのお話をゆっくりと聞いてあげてください。その上で、お義母さんから同席の同意を得るのがいいのではないでしょうか。

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