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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 7
毎年検診を受けていた病院で友人ががんを見落とされた
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
友人の件で、相談です。友人ががん検診でがんが見つかり、手術をしたら末期がんでした。彼は、毎年同じ病院でがん検診を受けていたので、見落としではないかと疑問です。こういったケースで、検診していた医療機関に補償を求めることはできるのでしょうか。
(60代、男性)
集団検診では、医師に課せられる注意義務は高くない
とても答えを出しにくい質問です。というのも、どこのがんだったのか、どういう検診を受けていたのかもわからない、情報が少なすぎるので、答えようがないのです。まず、その点をわかっていただいた上で一般的なお答えを致します。
がんには検診で見つけやすいものと、見つけにくいものとがある、と言われています。検診で見つけにくいがんには、例えば膵がんや卵巣がんなどがあるようで、膵がんなどは、人間ドックでもなかなか発見できない、という話を聞いています。でも、医術は日進月歩です。かつては発見できないとされていたがんが、技術の進歩や診断装置の開発で発見できるようになりつつあります。
ただ、検診といっても集団検診などですと医師に課せられる注意義務はさほど高くはありません。例を挙げれば、こんなケースがあります。
企業内集団検診において、撮影された胸部レントゲン写真の読影に関する判例です。担当する医師が陰影を異常と判断しなかったため、患者は肺がんで死亡しました。そのケースについて、裁判所は「定期健康診断は、一定の病気の発見を目的とする検診や、何らかの疾患があると推認される患者について具体的な疾病を発見するために行われる精密検査とは異なり、企業などに所属する多数の者を対象にして、異常の有無を確認するために実施されるものである。したがって、そこにおいて撮影された大量のレントゲン写真を、短時間に読影するものであることを考慮すれば、その中から異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界があるというべきである」と判示して、遺族の損害賠償請求を却下しています(東京高等裁判所、平成10年2月26日判決)。
また、検査の結果、多少見落としがあったとしても、その過失と患者の死亡との間には因果関係はないとして、逸失利益の請求は認めず、ただ『延命利益の喪失』という名目で若干の慰謝料を認めた判例もあります。
ご質問のケースが前に受けた検診で発見可能だったものか、発見自体が無理だったのか、あるいはそれが無理だったとしても、最後の検診で発見した後でも何かしら治療あるいは延命の可能性があったのか、それを詳しくつきとめないと医療機関への請求はできません。
ただ、私の回答だけでガッカリしないで別のところでセカンドオピニオン(第2の意見)を求めてみてください。以前にもご紹介しましたが、医療問題につき、専門的に相談を受けている弁護士組織があります。下記に記しますので、是非1度連絡をとってみてください。