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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 9
有給休暇が底をついた。仕事と治療を両立できる法的支援は?
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
仕事を続けながら、抗がん剤治療をしています。手術・治療のために利用した有給休暇も底をつき、欠勤が増えています。働いていない時間の給料をもらえないのは仕方ないのですが、欠勤の限界がきており、このままでは退職を考えなくてはなりません。会社を退職せずに、仕事と治療を両立できる法制度はないでしょうか。
(40代、女性)
治療について法的な権利はないが、「女性と仕事の未来館」へ一度相談を
業務上の傷害・疾病以外の病気の治療に、法的な権利はありません。
公務員ならば、長期疾病の際の休職規定がありますが、民間の会社に関してはありません。個々の会社の制度や、会社と従業員との話し合いに委ねられています。
その際、基準となるのはその会社の就業規則です。就業規則には概ね一定期間の病気休職に関する定めがあり、その期間は休業することができると明記されています。そしてその期間は、通常これまでの勤続年数が長いほど長くなっているようです。
また、その間、有給なのか、無給なのかも各会社によって違います。
さて、病気が治って働けるようになったときに復職できるかどうか、できるとしても元どおりの仕事に復帰できるかどうか、これも会社の就業規則、あるいは会社側の判断次第です。多くの会社では、そういう場合に解雇を言い渡すのは「精神又は身体の障害により業務に耐えられない場合」や「傷病などのため将来業務に耐えられない場合」などという定めがおかれています。
するとそのときのあなたの身体の状況によって、これまでどおりの仕事ができそうか、それが無理だとしてもやや軽易な仕事ならできそうか、そしてそこへの配転が可能であるかなどを考え合わせて、復職の可否や仕方などを決めることになるでしょう。
その際、こんな判例があることも参考にしてください。
「労働者が、現在命じられている労務や休職前に命じられた労務に就くことが困難であるとしても、労働契約上使用者が命じうる他の従事可能な労務がある場合には、その労務への配転可能性を検討する必要がある。配転可能性がある場合には、労働契約上の労働義務を履行できない状態にあるとは言えないので、そのような労働者に対してなされた解雇は無効である(昭和62年12月10日大阪地裁岸和田支部決定)」
ただ、休職期間を経過しても、なお治療を要する状態が続いており、そのためしばしば会社を休まなければならないとなれば、復職は無理かもしれません。経済状況が厳しい昨今、そこは会社の経営状態と、あなたのこれまでの貢献度とのかね合いということになるでしょう。
会社と話し合いを始める前に1度、私が館長を務めている「女性と仕事の未来館」へご相談くださいませんか。働く女性のために電話相談を承っております。労働問題の専門家から、何か具体的なアドバイスをさしあげられるかもしれません。