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子供への遺産を成人まで第三者に預けるには?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2010年7月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


私は乳がんで、未成年の子供がいます。母子家庭なので、もし私が死んだら、子供は施設に預ける予定です。預貯金・死亡保険金などを身内ではなく、第三者機関(法律事務所など)に預け、成人してから子供に相続させることはできますか。

(40代、女性)

遺言で第三者を後見人にできるが、財産管理だけなら信託銀行に頼める

「母子家庭で未成年の子供がいる」という意味は、もし、あなたが亡くなったら、相続人はそのお子さん1人である、と解釈させていただいていいですか。また、あなたの死亡保険金の受取人は既にそのお子さんとして指定されている、と解釈させていただいていいですか。それでいいと仮定した上でお答え致します。 もし、あなたが亡くなると、お子さん自身は施設に預けるとしても、法律的には以下、3つのことが発生します。

①親権者がいなくなるので、後見人を選任しなければならない。

②死亡の瞬間に相続が発生するので、預貯金は自動的にお子さんのものになる。ただし、名義を変えるには金融機関の要求する書類(除籍謄本、戸籍謄本など)を揃えて提出しなければならない。その書類の提出期限はとくに決まっていない。

③お子さんにはあなたの死亡保険金を受け取る権利が発生する。ただし、現実に受け取るためには②と同様の手続きが必要。

そこで、まずは後見人の選任ですが、これはあなた自身が遺言で指定することもできますし、その指定がなければ、施設の所長さんなど利害関係人が家庭裁判所に申し立てて選任してもらうこともできます。後見人は身内である必要はありません。

もし、あなたご自身に信頼のおける友人などがいるなら、その方を指定しておいたらいいでしょう。 後見人が選任されれば、その方がお子さんの身上監護及び財産管理をすることになり、②③の手続きなども行うことになります。 その際のあなたのご希 望は、「子供が成人するまでは直接子供にお金を渡さないでほしい。成人したら渡してほしい」ということですよね。ならば、それはむしろ後見人として当然の ことです。お子さんが成人すれば、後見人としての任務は終了しますので、2カ月以内にその管理の計算をして家庭裁判所に提出し、その後、すべての財産関係 の書類をお子さんに引渡すことになります。

あなたが亡くなった後のお子さんの将来を考えるとき、やはり遺言が必要と考えます。後見人に身上監護と財産管理の双方を任せるのか、それとも財産管理だけ を任せるのか、遺言書にその辺も明確に書いておかれるといいでしょう。できれば公正証書遺言にしておくことをお勧めします。 なお、後見人候補者としては、弁護士、公認会計士、司法書士など、法律を知っていてマメに動いてくれそうな人が良いかとも思いますが、財産管理だけを頼むなら、信託銀行などでも「遺言信託」などを扱っているので、1度相談なさってみてもいいかもしれません。

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