肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 13

生命保険金を受け取ると、生活保護はどうなるか

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2010年11月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


がんで仕事を辞め、収入が激減したため、生活保護を受けています。抗がん剤治療に伴うカテーテル手術を受けたところ、加入している生命保険から入院給付金と手術給付金が出ました。これは収入に認定され、生活保護の受給に影響するでしょうか。保険金は受け取らないほうがいいでしょうか。

(40代、女性)

生命保険金を市町村に返還するよう求められる

生活保護は、それを受ける人が「その利用しうる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用する」(生活保護法第4条)ことを要件として行われます。ですから、生命保険に加入しているなら、生活保護の申請時にそれも資産として申告しなければいけなかったものです。もし、そのときに申告をしていたならば、おそらく解約して返戻金を資産として計上することになったでしょう。

また、生活保護法には「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があった時(中略)は、速やかに保護の実施機関(市町村)又は福祉事務所にその旨を届出なければならない」(第61条)とあります。保険金を受け取ったら、なるべく早くご自身で届け出るか、それが無理なら、民生委員さんに話して届け出るのがいいでしょう。

届け出をすると、その分の給付金は市町村に返還しなければなりません。また、保険契約は原則として解約するよう求められ、解約返戻金はその時点で資産として計上し直されますので、生活扶助費が多少減額されるかもしれません。

ご質問には「生活扶助費が減らされるなら保険金を受け取らないほうがいいでしょうか」ともありましたが、それは本末転倒です。受け取りを辞退したとしても、保険に加入している事実がある以上、保険料や解約返戻金の額によっては解約を求められ、その際、発生した返戻金は原則として収入と見なされます。むしろ、そういう対応をすると、生活保護の不正受給と認定されて、生活保護の停止や廃止の処分を受けるおそれが出てきます。

ちなみに、生活保護法では、たとえば、別れた夫から送られた養育費や国から支給される子ども手当なども「収入」と見なされます。ただ、子ども手当だけは同額の加算を受けるため、それと相殺されプラス・マイナス・ゼロになるという仕組みになっています。

あなたの場合、カテーテル治療を受けたということですが、それは生活保護法に基づく医療扶助の範囲内ですか。生活保護法に基づく医療扶助とは、あらかじめ 「医療券」というものを発行してもらい、国で指定された「生活保護指定医療機関」で治療を受けるものです。医療券で受けられる治療は、国民健康保険に加入 している人と同レベルの現物給付です。ということは、保険適用外の治療だと自己負担になるということでもあります。そして、それが高額ならば、高額医療費 として税務署から還付を受ける権利が発生しますが、その還付金もまた、生活保護との関係では「収入」と見なされます。

これからは、収支に関しては細かいことでも、民生委員さんや福祉事務所の担当者と相談しながら進めていくのがいいでしょう。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート6月 掲載記事更新!