肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 15

違法な手段で販売された健康用品。返品できるか?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2011年1月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


母は進行大腸がんで1年以上前、がんに効くと雑誌で紹介されていた10万円以上もする健康用品を通信販売で購入しました。ところが、この商品のメーカーと販売会社が薬事法違反で摘発されました。報道によれば、がんに対する商品の効果も実証されていないとのこと。販売会社に返品を要求しましたが受け付けてくれません。法的措置を取ることはできないでしょうか。

(40代、男性)

明らかに詐欺商法。返品できる可能性はある

ご質問のお手紙のあとがきに、「雑誌の記事では商品名は出さずに商品の効果が宣伝されており、会社の連絡先が記載されていたのでそこへ電話をすると、商品を買うように勧められた」「会社は詐欺罪にはならなかった」とあるので、それを前提にお答えします。

刑法上、詐欺罪で問責するためには、初めから明らかに人を騙そうという「故意」がなければならず、薬効があるかどうか確認ミスがあったなどという「過失」では立件できないので、薬事法違反で問責したのでしょう。しかし、詐欺罪にはならなかったとはいえ、不確かな情報をもとに「がんに効く」と宣伝して、10万円以上もする商品を売りつけるのは明らかに「詐欺商法」です。

まずはお近くの「消費生活センター」にご相談ください。センターでは、販売会社とかけあって商品を返品し、代金を返還させるべく仲介の労を取ってくれるはずです。もしかしたら、センターでは同様の被害情報を掴んでいるかもしれませんので、そうであれば、早期に解決できると思います。

ご相談者の場合、以下のような法的対応が考えられます。

1. 消費契約法に基づいて、不確実な事項を断定的に宣伝して売りつけたという理由で契約を取り消す(ただし、その事実を知ってから6カ月以内に取り消さなければならない)。

2.  特定商取引に関する法律に基づいて、電話勧誘販売で買ったことを理由に(その他の理由はいらない)契約を撤回する。ただし、販売業者から申込みの内容を 記載した書面、または、契約内容を明示した書面を受け取った日から8日以内でないと撤回できない。書面の交付がない場合や書面の記載内容に不備がある場合 は、今でも撤回は可能。

3 .民法に基づいて販売会社に損害賠償請求をする。損害額は支払い済みの代金はもちろん、契約の取り消しに要した実費、精神的なショックを蒙った慰謝料も計上してよい。

がんを患っていると、多少なりとも「がんに効く」という情報を得れば、何でも試してみたくなるもの。まさにワラをもつかむ思いなのですね。でも、そこがツケメで世の中にはさまざまな商品、さまざまな情報が乱れ飛んでいます。

何かを購入したり、何かを試用したりする場合には、どうぞ予め、①主治医、②家族・友人、③消費生活センターに相談してください。いきなり販売会社の営業担 当者に連絡してはいけません。その人に説得されてしまいます。病気に振り回されず、1歩踏みとどまる勇気を持ってください。

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