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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 16
上司が乳がんのことを詮索。セクハラになるか?
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
乳がんの会社員(既婚)です。現在は職場復帰していますが、男性の上司から時折、「服や下着はどうしているのか」とか、「夫婦生活はうまくいっているのか」とか聞かれます。上司は「部下の健康管理は自分の責任。あなたが心配だから」と言うのですが、私には精神的負担になっています。これはセクハラになるでしょうか。
(30代、女性)
セクハラになるので、やめるよう要求できる
セクシャル・ハラスメントになるかどうかの決め手は、それを受けた側が不快に感じるかどうかです。このことを「アンウェルカムのルール」と呼ぶこともあります。
もっとも、不快に感じるかどうかは人によっても違い、年齢やその場の雰囲気、状況によっても違います。たとえば、公的な場所と、飲み屋など私的な場所では違いがあることは想像がつくかと思います。ただし、オフィスや働く場での言動であれば、一応大人の平均的女性の感性を基準にして、セクハラになるかどうか判断しています。セクハラの典型は性関係を迫ったり、ボディ・タッチをしたりすることですが、言葉だけでもセクハラになることはあります。
判例をみると、男性の市会議員が、議会開会直前の議会棟で女性の独身の市会議員に向かって「男いらずの○○さん」と大声で呼びかけたのが、セクハラと認定されたケースがあります。判決では、男性市議に対して「女性市議に慰謝料10万円を支払え」と命じています。また、会社の男性役員たちが40代の女性従業員に対し、「おばん」「ばばあ」などと呼びかけていたことをセクハラと認め、100万円の慰謝料を支払うよう命じたケースもあります。
残念ながら、がんがらみの発言の例は見当りませんでしたが、こんなふうに卑猥な言葉や侮辱的な言葉遣いをすれば、セクハラになるわけです。言葉遣いそのものは丁寧であっても、性的な質問や夫婦関係にわたるような質問は、聞かれた側が不快に感じることは見当がつきますから、一般的にセクハラ発言と考えられています。
あなたの場合も、上司のそのような質問は、やはり興味本位のセクハラ発言と言ってよいでしょう。「部下の健康管理は上司の責任」と彼が言うのは、単なる口 実としか思えません。あなたがどんな下着を着ようが、あなた方夫婦の関係がどうあろうが、あなたの本来的労働能力とはほとんど関係がない、と思われるから です。
どうぞ、上司(彼ではないその上の人)に相談して、セクハラ発言をしないよう頼んでみてください。また、あなたの働いている部署に女性の同僚はいません か。もしいるなら、女性同士協力して「○○さん、それってセクハラ発言になりますよ」とか、大声で牽制してもらうのもいいかと思います。毎回そういう対応 をすれば、上司も気づいてくれるのではないでしょうか。
それでもだめなら、お近くの地方労働局の雇用均等室にご相談ください。適切なアドバイスをしてくれると思います。