肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 18

採用時に過去の病歴を問うのは不当では?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2011年4月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


6年前、乳がんの手術後、抗がん剤治療の副作用がきつくて仕事を辞めました。今は、年に数回定期検査に行く程度で働くことに支障はないので再就職をめざしています。しかし、面接中に感触がよくても、がんにかかったことを話すと担当者の態度が変わるなど、何社受けても不採用になってしまいます。採用時に病歴を問うことは不当ではありませんか。

(30代、女性)

病歴が、現在の業務遂行能力と関係なければ不当

不当です。

職業安定法5条の4第1項では、求職者の個人情報の取扱いについて次のように定めています。

「公共職業安定所等は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。」

そして、この趣旨は、求人募集をする企業や派遣会社にも準用されることになっています。従って、応募・面接時点で「業務の達成に必要な範囲」を越えて過去の病歴を問うことは不当であり、違法でもあります。

あなたの場合は「6年前のがん手術」ということ、現在では年に数回の定期検査に行くだけで、日常生活には何の支障もないのだと思います。

もしもあなたが手術の際に乳房を切除してしまったとして、しかもこれからやろうという仕事が、時には乳房を見せなければならない類の仕事であるならば、不採用になるのもやむを得ないかもしれません。しかし、そうでない限りは過去の病歴は、現在の業務遂行能力と何の関係もない、と言ってよいでしょう。

でも実際にはそうした不必要な質問をしたり、不必要な健康診断を受けさせたりする例がしばしばあります。採用選考時に全員に「血液検査」や「尿検査」を受けさせることもあります。

こういう検査も、もしやるのなら、その労働者の能力を判断する上で必要不可欠であり、しかもそのことを被験者に説明して納得させた上で行うよう厚労省では指導しています。

ちなみに、平成13年10月に改正された労働安全衛生規則は、そういう意味から雇入時健康診断の検査項目から「色覚検査」をはずしました。

とはいえ、この就職難時代。「不当です、違法です」と怒ってみても、それで会社側が態度を改めるとは考え難く、あなたの採用に結び付くとも思えません。ここはちょっとずるく立ち回るしかないかもしれません。

聞かれなければ積極的に打ち明ける必要はありませんし、聞かれたとしても「体力に自信はありますか」「健康状態は良好ですか」という抽象的な聞き方ならば「ハイ」と答えておけばいいでしょう。バレても会社側に解雇する権利はありません。

それでも、もし退職を迫ってくるようなら、そのときは地方労働局にご相談ください。

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