肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 24

友人と起業準備中にがんが判明。これまでの準備金をすべて負担すべきか

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2011年10月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


脱サラして、友人と共同で起業しようと準備している最中に、急性骨髄性白血病と判明しました。治療に専念するため、起業はいったん白紙になりました。これまでの準備金で、私が負担した分はもちろんですが、友人が負担した分も返してほしいと友人は言うのです。私が返すべきなのでしょうか。友人には申し訳なく思いつつも、これからかかる医療費や無収入になることを考えると、できるだけ費用負担は抑えたいと思っています。

(40代、男性)

法的には返済義務はないが、購入したOA機器などはあげてはどうか

友人と2人で起業しようと準備を進めていたとのこと。お2人の関係をあえて法律にあてはめてみると、「組合」ではないかと思います。

「組合」というと、一般的には「農業協同組合」「生活協同組合」「労働組合」など大きなものをイメージしがちですが、法律上の組合の定義は次のようになっています。

「組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約するによって、その効力を生ずる。出資は、労務をその目的とすることができる。(民法第667条)」

ですから、2人だけでも共同の事業を営む目的でお金や労力を出し合う約束をしたのならば、それも組合契約です。1人ひとりが組合員です。

さて、病気になったことによって当初の目的が達成できなくなった場合、組合員としては原則としていつでも組合を脱退することができます。そして2人しかいない組合員の1人が脱退したときには組合自体が解散となります。

解散したあとの清算関係はどうなるかといえば、債務があればまず債務を返済し、その上で残余財産があれば出資額に応じて各組合員に分割する(民法第688条)ことになっています。

あなたの場合、もしも事務所を借りたとか、OA機器を購入したとか、PR用のパンフレットやチラシを作ったとか、そうした代金が未払いだとか、解約するのにキャンセル料が必要なら、まずそれを清算してください。そして残りが出れば、それは出資額に応じて分配してください。

また、購入した機器などについても共有ですから、出資額に応じて分けてください。現物で分けることが不可能なら、売却するとか、どちらかが引き取って清算金を払うとか、何らかの方法で分割・分配してください。

ただ、あなたの友人からの請求は、友人自身が出資したお金を全部返してほしい、ということですよね。それは組合の出資金の清算を越えるものです。それゆえ法的には返還義務はありません。

あなたの側に悪意があったのなら別として、白血病が発症したというのなら、とりたててあなたの責任ではありません。お互い運が悪かったと諦めて上記のように清算し、起業を中止すればいいでしょう。

とはいえ、これまでの友情にひびが入ることを心配しておられるなら、購入したOA機器などはすべてその友人にあげてはいかがですか。本当に友情があるのなら、それ以上に病気のあなたからお金を払わせるような仕打ちはしないはずです。

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