肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 32

オストメイトになり、左遷された。差別ではないか?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2012年6月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


夫が大腸がんで手術し、オストメイト(人工肛門保有者)になりました。退院して職場復帰し、入院前と同じく部長として働き始めました。しかし、会社が夫のオストメイトのことを知り、左遷されてしまいました。オストメイトというだけで、左遷された精神的ショックから、夫はうつ病になりました。これは、明らかな差別ではないでしょうか?

(47歳、女性)

「労働局総合労働相談センター」などに相談をしてみる

病気休暇後の復職者や治療中の労働者を守る法律・制度というものは、残念ながらまだ整備されていないのが現状です。

そこでまずは配転(左遷も配転の1種)に関する原則論を申し上げます。

配転は、当該企業内に労働協約や就業規則に配転がある旨の定めがあり、実際に行われた場合は、しばしば業務命令として発令されるものです。

しかし、その配転命令が

A 業務上の必要性が無い場合

B 不当な動機・目的が認められる場合(例:労働者を退職に追い込もうとして行われたイヤガラセ配転)

C 労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合

これらの場合などは、<配転命令権の濫用>や、<労働条件の不利益変更>として問題になります。

ご質問のケースと多少似たような判例としては次のような例があります。

「労働者が脳内出血で倒れて以降、病気休職に入っていたが、3年間の休職期間満了前に復職の意思表示をしたところ、会社は労働者には言語障害等の後遺症があるため就労可能な業務がないとして休職期間満了を以て退職扱いとした。これに対し、労働者はこの退職扱いを就業規則、労働協約等に違反し無効であるとして、従業員としての地位確認並びに未払い賃金等の支払いを求めて提訴した」というものです。

この人は休職後<時間がかかるが杖なしで歩行可能><右手指の動きが悪く細かい作業は困難だが握力に問題はない><会話も相手に通じる程度にはできる>という回復状況だったようです。

このケースに対して、裁判所は勤務先が大企業であることも勘案し、「雇用契約の信義則からすれば企業側は労働者の能力に応じた職務を分担させる工夫をすべきである」と判示して、労働者側の勝訴としています(平成11年10月4日大阪地裁判決)。

あなたの場合、善意に解釈すれば、病後であるからしばらく負担を軽くして様子を見ようという配慮かもしれません。

しかし、労働能力が低下したわけではないのに本人の同意なく左遷するのは違法です。

とりあえずは労働局総合労働相談センターか、労働基準監督署に相談してみるのが良いでしょう。

なお、<社団法人日本オストミー協会http://www.joa-net.org/>にも1度ご相談なさったらどうでしょうか。医療費や年金など、役に立つ情報を提供してもらえるはずです。

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