肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 42

父親の負債と保険金の相続は?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2013年4月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


末期の肺がんの父に、借金が5000万円あります。預貯金はわずかで、不動産はありません。私には父の借金を返済する余裕はありません。ただ、父は3000万円と2000万円の生命保険に入っており、受取人は私です。父が亡くなったら、生命保険は借金の返済になってしまうのでしょうか? また、相続放棄をしたら保険金は受け取れないのでしょうか?

(40代 男性)

生命保険金は遺産とは別物

結論から申し上げますと、あなたはお父様の借金の返済をしなくてもよいし、そのこととは別に保険金を受け取ってもかまいません。

まず、借金について言えば、お父様が亡くなったときにあなただけでなくお母様がいらっしゃれば、お母様とあなたの兄弟姉妹全員が相続人になります。

資産よりも借金の方が多い場合、大抵は相続放棄をしますが、それは「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所にその旨の申述をする(民法915条)」という手続きをとらなければなりません。

放棄するかしないかは各相続人の自由ですから、相続人全員が揃ってする必要はありません。

ただし、第1順位の相続人(配偶者や子ども)が全員相続放棄をすると、次は第2順位の親族(亡くなった人の親)が相続人として浮上してきますので、その人たちも自分が相続人となったことを知ったときから3カ月以内に、同様の手続きをとらなければなりません。

更に第2順位の相続人が全員放棄をすると、第3順位の相続人(亡くなった人の兄弟姉妹)が浮上してきますので、その人たちも同様の手続きをとらなければなりません。

そこまですれば、お父様の借金は誰も払わなくてよくなります。ただし、わずかばかり預貯金があるとのことですが、その預貯金についてももちろん相続することはできません。

一方、生命保険金は受取人が指定されているものであれば、保険約款に基づいてあなたご自身が受け取ることになります。遺産とは別物なので、あなたが相続放棄したとしても保険金を受け取ることに差し支えありません。

お手紙のご様子では、2口の生命保険の受取人はいずれもあなたという指定があるようですから今回は問題ありませんが、一般論として申し上げると、もしも受取人が指定されていなかったり、受取人を「法定相続人」と指定していたりすると、保険金も遺産と同じの扱いになりますので、受け取るとなると借金も同時に相続することになってしまいます。

お父様の存命中にこうした心配をしなければならないということは、さぞ心苦しいことでしょうが、予備知識があれば力になります。

万一の事態となっても、あなたやあなたがた家族が生活破綻に追い込まれる恐れはないと安心なさって、お心残りなきようお父様の看病をなさってくださいませ。

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