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がんと生きる知恵

その倦怠感は「副腎疲労」が原因かもしれない【前編】 「だるい・つらい・動けない」の正体を知ろう

監修●本間良子 スクエアクリニック院長
取材・文●菊池亜希子
発行:2019年1月
更新:2019年1月

  

「副腎疲労は自分自身の力で必ず治せます」と語る本間良子さん

その倦怠感と疲労感、「がんだから仕方ない」と諦めていませんか? だるくて、つらくて、動けない……。その症状は、もしかしたら、がん治療以外にも原因があるかもしれないのです――。

<監修者プロフィール>聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学病院総合診療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)の提唱者、ウィルソン博士に師事し、日本に「副腎疲労」という病態があることを広めた。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』など多数

「副腎疲労」って何?

眠っても疲れがとれない、朝なかなか起きられない、昼間は元気が出ない、常に気持ちが落ち込んでいる、ちょっとしたことでイライラする……そんな日々が続いていないだろうか? がん治療中は、体調不良が起こると、すべて治療の副作用と思い込みがちだが、「疲労感がずっととれない」という状態は、副作用とは言い切れない場合があるという。

「それは、もしかしたら〝副腎疲労〟かもしれません」

そう語るのは、スクエアクリニック院長の本間良子さん。

現代社会に生きる私たちは、日々、さまざまなストレスに晒(さら)されている。そのストレスをコントロールしているのが副腎。左右の腎臓の上に、1つずつ乗っているクルミほどの小さな臓器で、1つが3~5gほど。腎臓に接してはいるが、腎臓の働きとは関係ない独立した臓器だ。この小さな副腎こそが、私たちの心身に訪れるあらゆるストレスを感知し、そのたびに「コルチゾール」というホルモンを分泌して、ストレスから体を守っているのである(図1)。

コルチゾールは、朝の目覚めを促す役割もあるので、午前6時ごろから生産量が増え、午前8時ごろにピークを迎えて昼間の活動に備える。その後、徐々に減っていき、深夜には午前中の10分の1ほどしか分泌されない。日中に多くのストレスを受けて働き続けた副腎にとっても、深夜は休息時間というわけだ。

こうした1日の分泌リズムを基本に持ちながら、日々の営みの中で突発的にストレスが生じると、その都度、副腎は瞬時にコルチゾールの分泌量を増やして対応する。人間関係のトラブルをはじめ、感染症や怪我など、体がストレスを感じた瞬間に、副腎がピュッとコルチゾールを産生していると想像してほしい。ストレスは体に炎症を引き起こすので、コルチゾールは、その火種を消しに行く〝火消し役〟とも言えるのだ。

本来、ストレスは一時的なものなので、コルチゾールもそのときは分泌量が増えても、ストレスが収まってくれば元の状態に戻る。ところが、強いストレスが長期間続くと、コルチゾールがずっと出っぱなしの状態が続き、副腎自体が疲弊していく。さすがに月単位、年単位で分泌し続けると、副腎が疲れ切り、本当はコルチゾールが必要なのに、分泌できない状態に陥ってしまうというわけだ。そうなると、コントロールされなくなったストレスは体のあちこちに炎症を起こし、暴れ回る。この状態を〝副腎疲労〟と呼んでいる(図2)。

夫が「副腎疲労」だった!

実は、本間さんの夫(スクエアクリニック副院長の本間龍介さん)も、長年、耐えがたい疲労感に苦しみ、病名のつかない体調不良に悩み続けた。妻である本間さん自身も、隣で何もできないつらさを、何年も抱えていたという。

「学生時代に出会ったころの彼は、週末になると眠り続け、とくに夏休みなど長期休暇のときは数日間、昼も夜もぐったり横になっていることが多かったことを覚えています。当時は、疲れやすい体質なんだと本人も私も思っていたのですが、医師となり、数年が経ったころ、とうとう朝、ベッドから起き上がることすらできなくなってしまったのです」

すぐに病院であらゆる検査をしたが、結果は異常なし。というより、数値に現れる異常は何もなく、結局、原因不明のうつ病と診断された。うつ病の薬を処方されて服用したものの、まったく回復しないばかりか、さらに悪化していったという。

「疲労感は主観的なものなので、本人がどれほど〝疲れている〟と思っても、検査結果に異常がないと病名がつきません。すると途端に、〝根性がない〟〝気のせい〟という言い方をされ、気づくと〝怠け者〟にされてしまいます。夫の場合、〝うつ病〟と診断されましたが、薬は全く効果がなかったので、うつ病ではないと私は確信しました」

夫を助けられるのは自分しかいないと思った本間さんは、疲労感に関する海外の文献を読みあさった。そして出会ったのが米国人医師ジェームズ・L・ウィルソン博士が書いた『Adrenal Fatigue(アドレナル・ファティーグ=副腎疲労)』という1冊の本だった。

「その本に書かれていた症状は、まさに夫の状態そのものでした。すぐさま、そこに記されていた唾液検査キットをアメリカから取り寄せて検査しました。結果は〝唾液中に検出されるコルチゾールが極度に少ない状態〟。夫はまさに〝副腎疲労〟だったのです」

副腎疲労には段階があり、症状は一所に留まっているわけではない。軽症のうちは、ストレスが続いてコルチゾールが出続け、コルチゾールレベルが高まっている状態。朝は疲れてボーッとしていても、コーヒー(カフェイン)を飲んだり、甘いものを食べて血糖値を上げたら副腎が力を振り絞ってコルチゾールを分泌してくれるため、動けるようになる。血糖とコルチゾールは連動していて、血糖値が上がるとコルチゾールレベルも上がるからだ。しかし同時に、そのこと自体が、体に無理を強いている。そんな状態が長期間続くと、いよいよ副腎が疲れ切ってコルチゾールの分泌ができなくなり、中等度、そして重症へ進んで行ってしまうのだ。本間さんの夫は、そのときすでに、重症の段階にあった(図3)。

「原因不明の疲労感に何年も苦しんできた夫にとって、自分の病態に〝副腎疲労〟という名称があったことが何より救いだったようです」

そのときのことを、本間さんは「出口の見えない真っ暗闇のトンネルの中で、ようやく光が射しこんできたように思った」と語った。そこから夫婦二人三脚で治療に励み、徐々に回復。数年後には見違えるほど元気になり、2005年、夫妻は神奈川県川崎市に、日本で初めて「副腎疲労外来」を設けたスクエアクリニックを開業した。それから13年、検査数値には現れない疲労感を抱えた人たちは、日本でも増え続ける一方だ。しかし、まだ「副腎疲労」という病態を知らずに、なす術なく苦しんでいる人も多いのではないだろうか。

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