編集部の本棚 2020/2Q
がんで不安なあなたに読んでほしい。
清水 研著 ビジネス社 1,400円(税別)
いまや国民の2人に1人が罹患すると言われているにもかかわらず、何故か、「自分にかぎって」と恣意的に避けられるがん。その結果、がんと告知されると、「どうしてこの私が」と強い衝撃を受け、その感情から抜け出せないまま治療が始まり、重要な治療選択や大切な療養生活の対応につまずくこともある。
著者は、4,000人以上のがん患者さんとその家族に向き合ってきた精神腫瘍医の清水研さん。本著は、がんの精神的苦痛という特徴をよく掴んでいて、告知から始まり、その時々で直面する悩みや不安に時系列に対処できる「宣告を受けた直後の不安」「治療中の悩みや不安」「治療後の悩みや不安」と、わかりやすい3部構成になっている。
自分がいま直面している悩みや不安をまず解決し、その後で、ゆっくり自分の辿った心の軌跡を振り返って、よくここまで来たと自分を肯定したり、また、今後直面するかもしれない問題に備える読み方もできる。
不安の狭間にいるあなたの心を解きほぐすように、どんな悩みでも肯定してくれるところから始める著者のやさしく、あたたかい言葉が心に染みる。それだけでも、心が軽くなり前を向けるかもしれない。もちろん実用的な「セカンドオピニオンを受けたいが、主治医に言い出しにくくて」というような問いにも、解決法を示してくれる。
著者の豊富な経験に基づく言葉には、確かな裏付けと患者さんに対するやさしい気遣いがあり、あなたの不安を軽くしてくれる言葉や解決法が見つかるはず。タイトル通り、がんで不安なあなたに読んでほしい(松)。
親子で考える「がん」予習ノート
一石英一郎著 角川新書 900円(税別)
がんはすでに日本国民にとって身近な病気にもかかわらず、がん=死のイメージは固定化されてしまい、残念ながら日本人のがんリテラシーは世界のなかでもとても低いと言われている。
そこで子どものときからがんについて教えることが重要だとして、2020年度からまず小学生への「がん教育」がスタートする。2021年には中学生、そして高校生にと広めていく予定だ。
本著は、そのような社会の流れに添い、〝がんを予習〟することができる5章立ての構成になっている。第1章「がんは正しく早く知れば9割治る? ~がんの基礎知識~」は、「なぜいまがん授業が必要なのか」から始まる。最終の第5章「これからのがん治療」では、CAR-T療法や将来有望視されている光免疫療法などの最新治療情報も取り上げている。
がんは遺伝子変異が次々と特定され、それにともない化学療法なども進化して来た。それらも含めてがんのことをわかりやすく書いてあるため、子どもの学習に対する親子の参考書にもなる。また、タバコや肥満など、がんと生活習慣の関係を早くから知っておくことは子どもにとって重要だ。
がんについての正しい知識を予習しておけば、たとえ、がん告知を受けたとしても、より早く冷静さを取り戻すことができ、良い治療へのスタートが切れるだろう。そのためにも一読しておくことをお勧めしたい(松)。