編集部の本棚 2019/4Q

文●「がんサポート」編集部
発行:2019年10月
更新:2019年10月

  

もしも一年後、この世にいないとしたら。
清水研著 発行:文響社 980円(税別)

〝レジリエンス〟日本では、一般的にはあまり浸透していない言葉だが、元々はストレス(外力による歪み)、レジリエンス(外力による歪みを跳ね返す力)という共に物理学の用語だ。今では心理学でも使われるようになり、国立がん研究センター中央病院では2016年から「レジリエンス外来」を開設して、がんという苦難に直面したときにレジリエンス(人が悩みと向き合う力:本著訳)が重要な鍵になると、患者のレジリエンスを高めるためのカウンセリングを行なっている。

本著は、レジリエンス外来開設を推し進めた同病院精神腫瘍科長の清水研さんが、これまで3,500人以上のがん患者とその家族に向きあってきたなかから得た〝生き方〟を1冊の本にまとめたもの。「苦しみを癒すのに必要なのは、悲しむこと」「今日を大切にするために、自分の『Want』に向き合う」「死を見つめることは、どういきるかを見つめること」など5章の構成で、どの章も清水さんの人柄が滲み出ているような優しく語りかける言葉が、スーっと心に入ってくる。

日々漫然と暮らしがちな自分に、「もしも一年後、この世にいないとしたら」と本著は問いかける、やりたいことを先延ばしにしていないかと。またその問いは、人生は無限ではなく、今生きている瞬間はかけがえないとも気づかせてくれる。ともすれば流されがちな自分への戒めとしても常にそばに置いておきたい1冊だ。

清水さんの人生をも変えたという、厳しい局面に直面したがん患者たちのレジリエンスは、「苦難と死は人生を無駄にしない。そもそも苦難と死こそが人生を意味あるものにする」(ビィクトール・フランクル)という言葉を思い出させる。しかし、その一方で、がん告知後の1年以内の自殺率は一般人口の24倍だと序章に記されている。「私たちは、人生の闘いだけは決して放棄してはいけない」(松)

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