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――美容ジャーナリスト山崎多賀子の「キレイ塾」

がんになっても快適に暮らすヒント Vol.4 日本女性の約8割? マンモで見えない「デンスブレスト」

山崎多賀子●美容ジャーナリスト
発行:2016年11月
更新:2016年11月

  

やまざき たかこ 美容ジャーナリスト。2005年に乳がんが発覚。聖路加国際病院で毎月メイクセミナーの講師を務めるほか、がん治療中のメイクレッスンや外見サポートの重要性を各地で講演。女性の乳房の健康を応援する会「マンマチアー委員会」で毎月第3水曜日に銀座でセミナーを開催(予約不要、無料)

今年(2016年)も10月のピンクリボン月間は、各地で乳がん啓発活動が盛んに行われました。この6月、小林麻央さんの衝撃的な乳がん告白もあり、治ってほしいと願うと同時に他人ごとではないと、いつも以上に関心を寄せた方が多かったのではないでしょうか。

ピンクリボンの大きな柱の1つが「乳がん検診」の啓発です。ところが乳がん検診の「マンモグラフィ」では、がんが見つかりにくい人が結構いることをご存じでしょうか?

今、話題になっている「デンスブレスト」(高濃度乳房)について、放射線科医の戸崎光宏さんにうかがいます。


膨大な研究データの蓄積と研究により、常に更新されるエビデンス(科学的根拠)。これに基づき2年に1回改訂されるガイドライン。推奨グレードはA=確実、B=ほぼ確実、C1=可能性あり、C2=証拠不十分、D=大きな関連なしとされる。2015年度版では50歳代のマンモグラフィの推奨グレードがAからBに変更された

山崎 最近、乳がん検診のマンモグラフィ(以下、マンモ)検診について、『デンスブレスト:DENSE(濃い)BREST(乳房)=高濃度乳房)』(以下、デンス)という言葉が聞かれるようになりましたね。放射線科医である戸崎さんは、以前から日本人のデンスブレストについて、問題意識をもたれていました。

2015年春に改訂された、日本乳がん学会編『乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2015年版』で、50歳代のマンモ検診の有効性について、推奨グレードが、A(確実)からB(ほぼ確実)へ引き下げられました。AからBになることは、滅多にないそうですね。ちなみに40歳代は以前からBです。

格下げの理由にデンスブレストは関係するのでしょうか。

乳腺濃度が高いとマンモでは がんが見えないことがある

戸﨑光宏さん さがらウィメンズヘルスケアグループ乳腺科部長。相良病院附属ブレストセンター放射線科部長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク理事長。日本を代表するMRIのスペシャリスト

戸崎 理由は大きく2つあり、1つはおっしゃる通りデンスです。そしてもう1つに『過剰診断』が挙げられます。

山崎 マンモは唯一エビデンスのある乳がん検診ということで、啓発されてきました。何が問題なのでしょう。

戸崎 欧米で始まったX線によるマンモ検診は、実施すると乳がん死を減らすことが証明されている唯一の検診法です。日本もそのデータを元に乳がん検診が実施されています。

「乳がん死」を減らすために検診が必要であることは、間違いありません。ただ、欧米の40年近くに及ぶ膨大なデータから、マンモ検診の弱点も明らかにされてきているのです。

山崎 マンモの弱点の1つが、デンスということですね。

戸崎 そうです。X線は乳腺もがんのしこりも同じく白く映し出すため、乳腺濃度が高いと病巣が隠れてしまい、見えにくいという弱点が昔から知られていました。

山崎 はい。そのためデンス、つまり乳腺濃度が濃い傾向にある40歳未満には以前からマンモは推奨されていませんでしたね。

戸崎 そうですが、体質的に欧米人よりアジア人のほうがデンスは多く、日本人女性の8割近くを占めるというデータもあります。

山崎 8割も! ということは、年齢に関係なくデンスが多い。実は私(55歳)も主治医に確認したところ、デンスでした。

判定はマンモの画像でするのですね。

戸崎 はい。画像診断では乳腺濃度を4段階で判定し(画像)、『不均一高濃度』と、『高濃度』に該当する人はデンスと判定しますが、このタイプは念のため超音波検診も併用したほうが良いのです。

実際にアメリカでは高濃度乳房でがんを見逃されたナンシー・カペロさんが「ARE YOU DENSE?」という運動を起こし、現在、24以上の州で、マンモ検診でデンスと診断された人にはその通知が行く法整備がなされています。

しかし日本にはそういう義務はないばかりか、デンスについて医療者がやっと真剣に議論し始めたばかりというが現状です。

脂肪が多いほど病変がよく見える。不均一高濃度(乳腺50~75%)、高濃度(乳腺75%以上)は病変が乳腺に隠される危険性がある(画像提供:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク)

乳がん検診を受けたら 自分の乳腺濃度を聞いておくといい

自分の乳腺濃度が記された「検診結果報告書」。写真と解説入りでわかりやすい。検査機関でこのような取り組みが広まることを望みたい

山崎 それで私たち当事者はこれまで知る機会がなかったわけですね。デンスと知らずに毎年マンモを受け、「異常なし」の紙にホッとしていたら、実は乳がんが隠れている可能性もあるということですね。

たしか、北斗晶さんも毎年マンモを受けていたのに検診では見つからなかったと、何かで読みました。その理由が何かはわかりませんが、毎年検診を受けて「異常なし」だったのに半年後に自分で大きいしこりを見つけた、という話は結構聞きます。

折角、自分の命を守るために乳がん検診を受けているのに、画像で見えないと命が守れないんですけど。

戸崎 本当にそうですね。私が検診にかかわるクリニックでは、その方の乳腺濃度がわかるよう、診断結果に4段階の写真をつけ該当箇所を示し、デンスに該当する方には超音波検診も受けるよう勧める文言を記しています(資料)。他の施設でもこの方法が広がることが理想で、NPO法人乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)のホームページでは、乳腺濃度を知らせている施設を紹介しています。

山崎 検診を受ける立場から言うと、まず、そういう事実があることを一般に広く伝えてもらいたいです。そして、マンモを受けてデンスなら、それを本人に知らせることを行政主導で行ってほしいです。

マンモの画像の読影時にはすでに乳腺濃度の判定がなされているのですから、診断結果を記してくれればいいだけ。手間とは思えません。

戸崎 最近は乳がんの特集記事や、新聞の一面でもこの問題は大きく取り上げられ、少しずつ知識をもつ人が増えていますから、今後は診断結果を知らせる病院も増えていくと思います。ただ、現段階ではごくわずかです。

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