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――美容ジャーナリスト山崎多賀子の「キレイ塾」

がんになっても快適に暮らすヒント Vol.7 すべてのがん患者を支えるために…… がん患者団体のネットワーク組織「全国がん患者団体連合会」

山崎多賀子●美容ジャーナリスト
発行:2017年2月
更新:2017年2月

  

やまざき たかこ 美容ジャーナリスト。2005年に乳がんが発覚。聖路加国際病院で毎月メイクセミナーの講師を務めるほか、がん治療中のメイクレッスンや外見サポートの重要性を各地で講演。女性の乳房の健康を応援する会「マンマチアー委員会」で毎月第3水曜日に銀座でセミナーを開催(予約不要、無料)

がんになった人やその家族を、がん経験者らが中心となって支える「がん患者団体」。2015年5月、全国で活動するがん患者団体が連携する「一般社団法人 全国がん患者団体連合会(全がん連)」が発足しました。がん基本対策法が制定されて10年あまり。地域やがん種を超えてがん患者団体がつながることの意味を、全がん連の理事長、天野慎介さんにうかがいます。


山崎 一昨年の2015年に、「全国がん患者団体連合会」(以下、全がん連)を立ち上げられましたね。活動が活発な乳がんの患者会でさえ連携が限られるなか、がん種や地域を超えた患者団体のネットワーク組織をつくるなんてすごいな、と思うと同時に、必要なことだと大きな期待感をもちました。ただ、まとめるには大変な労力がいります。なぜ連合組織をつくろうと思ったのですか?

天野慎介さん 2000年に27歳でリンパ腫を発症、化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植を経験。2001年悪性リンパ腫の患者団体グループ・ネクサスに参加。2009年より2期4年、厚生労働省がん対策推進協議会委員を務め、第2期がん対策推進基本計画の策定にかかわった。現在は、厚生労働省がん診療提供体制のあり方に関する検討会委員などを通じて、第3期がん対策推進基本計画の策定にかかわる。一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長、一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長などとして、がん患者支援を行う

天野 全国で活動しているがん患者団体は、それぞれの地域や疾病ごとに大切な役割を果たしています。活動のなかで直面する課題や問題の中には、地域や疾病にかかわらず、共通した課題もあると思います。例えば法律や制度が壁となり解決が困難な課題です。

個別のがん患者団体が声をあげても法律や制度がなかなか変わらないことは、身をもって体験していたので、国に患者の声を届けるためには、全国を横断する団体が必要だろうと考えました。

山崎 天野さんは悪性リンパ腫の全国患者団体、グループ・ネクサス・ジャパンの理事長で、これまでにも国に対して積極的に要望活動をされてきたそうですね。

天野 はい。20歳代で悪性リンパ腫になったことから、2001年にグループ・ネクサス(現クループ・ネクサス・ジャパン)の創立メンバーとなり、その後理事長になりました。悪性リンパ腫の患者数は多くなく、病気に関する情報が全くなかったので、最初は患者さんへの情報提供や交流の場としての役割を果たしていました。患者さんの話を聞くと、抗がん薬しか治療法がないのに、望む薬が使えないという話がたくさんあり、抗がん薬が早期承認される要望活動をしてほしいという声が多くなり、国や厚生労働省に働きかけるようになりました。しかし一団体が働きかけたところで、なかなか議員は動いてくれません。こういった制度を変えていくには、がん患者団体が連携する必要があると考えました。

山崎 全国のがん患者団体がまとまれば、発言力が強くなると考えたわけですね。実際に、昨年2016年末に成立した「改正がん対策基本法」に、全がん連の要望が組み込まれました。法改正を見越して、2015年に全がん連を設立されたのですね。

 

一般社団法人 全国がん患者団体連合会(全がん連)

【DATA】 がん患者団体の連携や活動の促進を図りつつ、がん患者と家族の治療やケア、生活における課題の解決に取り組み、がん医療の向上とがんになっても安心して暮らせる社会の構築を目指すがん患者団体の連合体組織。2015年5月に設立。毎年1回「がん患者学会」として、全国のがん患者団体が交流し、がん医療やがん対策の課題を学ぶ催しを開催するほか、政策提言や調査研究などを行う

【連絡先】 〒158-0091 東京都世田谷区中町2-21-12 なかまちNPOセンター内
E-mail ::office@zenganren.jp FAX:03-6683-2273 URL:zenganren.jp/

法改正にあたっての要望は「小児・希少・難治がん対策」と
がんになっても安心して暮らせる「社会環境の整備」

天野 そうです。がん対策基本法が制定されて2016年で10年。その一部を改正する「改正がん対策基本法」が2016年12月9日に成立しました。全がん連が掲げている目標は、「がん医療の向上」と「がんになっても安心して暮らせる社会をつくる」ことです。そこでがん患者の切実な声を法に入れ込む活動をしてきました。

山崎 どのようにかかわったのですか。

天野 全がん連を立ち上げてすぐ、がん対策基本法の改正案をつくろうという話があり、超党派の国会議連から2015年6月に参考人として呼ばれました。そこで全がん連の加盟団体の意見を吸い上げ、改正がん対策基本法にこういう内容を入れてくださいと、要望書をあげました。

入れてほしい文言はたくさんありますが、法律を変える難しさを知っていたので、全がん連で協議して、これだけは絶対に入れてほしいという2つを要望しました。1つは、小児がんに加え、この10年間のがん対策で取り残されてきた希少がん、難治(なんち)がんの研究、支援です。(第十九条第二項)

もう1つは、がん患者の社会的支援です。第2期がん対策推進基本計画では、社会支援をがん患者の就労支援に絞られてしまった感があったのです。もちろん就労支援は大切なことですが、専業主婦の方やリタイアした患者さんの支援にはならない。社会全体の支援になるために、もっと広い視野からの対策が必要であるので、その文言を入れてほしいと要望しました。(第二条第四項)

山崎 この文言が入るか否かで、今後の国の動き方が全く違ってくるわけですね。

天野 違ってくると思います。法律に明記されれば、国も対策を推進することが求められます。2016年12月に「改正がん対策基本法」が成立し、がん対策推進協議会で検討されている第3期がん対策推進基本計画が、2017年6月に閣議決定されます。そこに新たに盛り込まれた内容が間違いなく記されるよう、12月13日付で要望書を提出しています。

 

「改正がん対策基本法」の改正点(抜粋。赤字は改正箇所)

第 二 条 がん対策は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。

第 二 条 第 四 項 がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援その他の必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること

第 十九 条 国及び地方公共団体は、がんの本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他のがんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に資する事項並びにがんの治療に伴う副作用、合併症及び後遺症の予防及び軽減に関する方法の開発その他のがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする

第 十九 条 第 二 項 前項の施策を講ずるに当たっては、罹患している者の少ないがん及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について必要な配慮がなされるものとする

改正がん対策基本法の詳細は、厚生労働省ホームページに掲載。または、「厚生労働省法令データベースシステム」で閲覧できる

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