がんのチーム医療・施設訪問1 がん研有明病院(東京都江東区)

患者さんの栄養管理を支える 栄養サポートチーム(NST)

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年5月
更新:2016年1月

  

作業の効率化と適切な人材配置がチーム機能を活かすカギ
比企直樹さん がん研有明病院消化器外科胃担当部長/栄養管理部長

●短時間で対応可能なシステムを開発

有明病院では、全国に先駆けて栄養障害の予防的な対応を行って成果を上げるなど、栄養サポートチーム(NST)がうまく機能している。その要因について、比企さんは「1つは、栄養管理にかかわる時間(カルテ回診)を1週間に唯一水曜日の1時間にとどめている」点を挙げる。そのときに担当看護師が、症例を持ち寄って栄養障害のある人を助けて行こうということで、チーム内で話し合いをする。

もう1つは、9年前に比企さんがシステムエンジニアと一緒にPCシステムを開発したこと。極めて優れたシステムで、一次スクリーニングが20~30秒、栄養プランは1~2分くらいで作成ができるようになり、だれでもそれなりの栄養管理計画書を組めるようになった。このことが、週1時間の短い時間での対応を可能としている。

●管理栄養士に白羽の矢

有明病院では、かつて個々の患者さんを拾っていって、何とか痩せないように、栄養障害に陥らないように予防的管理しようという話が出た。ただそこで問題となったのが、いったいだれがやるかということ。

医師や看護師は多忙で難しい。そこで白羽の矢を立てられたのが管理栄養士。

というのも患者に役立ちたいために管理栄養士になったにもかかわらず、病院では従来、料理のことばかりやらされていた。知識もあり国家資格も取得している管理栄養士は病棟に上がって、患者の病態を理解して、個々のテーラーメイド医療を行うのに適任であるとの見立てになった。そこで、管理栄養士に調理関連の仕事を止めさせて、全員を病棟に上げたところ、チーム医療が非常に上手くいくようになったと当時を振り返る。

栄養に関しては管理栄養士ということで、医師、看護師、薬剤師、ケースワーカー、事務などを含めて、栄養管理に関しては管理栄養士を主軸に回るようになり、いいチーム医療の実現になった。

「チーム医療とは、ただ単に人が集まれば何かができるというのではなく、リーダーシップを取る人が本気でやる気があることと時間がなければできない。栄養管理において、その時間とやる気ある人は、医師ではなくて管理栄養士であったということです」

「栄養サポートチーム(NST)」の活動が注目されている がん研有明病院

がん患者さんの入院時の身体所見、生化学的検査、既往歴などのスクリーニング検査のデータを起点として、周術期、入院期間、退院後を通じて一貫した栄養管理のサポート体制を構築し、成果を上げている施設がある。がん研有明病院の栄養サポートチーム(NST)だ。

2005年に現在地に新築移転後、同院ではNST制を導入、患者さんの栄養管理を行ってきている。

その成功の裏には、同院における栄養管理の重要性を認識したオリジナルの栄養管理プログラムの開発と、管理栄養士の日常業務に対する柔軟な対応があった。

NSTのメンバー

●コアメンバーの構成
有明病院のNSTは医師11人(消化器外科・内科、頭頸部、呼吸器、泌尿器、放射線、乳腺外科、整形外科など)、看護師24人(WOC [創傷・ストーマ・失禁看護]、病棟師長、手術室、外来など)、薬剤師2人、管理栄養士6人、検査技師4人、事務員1人、計48人のコアメンバーで構成される。

表1 NSTメンバーの役割

(東口高志ほか:疾患・病態別の栄養管理:理論と実践、医薬ジャーナル社、2008, 一部抜粋)

図2 栄養管理の流れ

●NSTメンバーの役割
NSTメンバーにおけるそれぞれの専門職の一般的な役割は表1の通りだが、有明病院でも同様の役割分担となっている。

●他医療チームとの連携
NSTは院内の「褥瘡(じょくそう)対策チーム」「摂食・嚥下障害対策チーム」「緩和ケアチーム」などと密接な連携を図っており、各チームから報告される栄養障害を来した、あるいは来すリスクのある患者さんへの対応を提示している。

●NSTにおける栄養管理の流れ
入院時に看護師さんによる栄養管理に必要な項目の一次スクリーニングが行われる。栄養障害のリスクのある患者さんには、後で示す「NST症例検討ワークシート」を用いた定期確認を行い、障害のある患者さんには栄養士と看護師が共同して対応、管理に当たる。退院時には担当医師による評価が行われる。退院後も外来で、栄養相談を受けることが可能である(図2)。

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