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FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 7
公的介護保険
今回は、公的介護保険の仕組みについて解説します。「自宅で療養や緩和ケアしたいけれど、介護保険がわからない」――そんなときのために知っておきたい介護保険の活用法をまとめました。
黒田尚子くろだ なおこ
1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター
在宅治療を望むがん患者や家族にとって、支えになるのが公的介護保険(以下「介護保険」)です。要介護保険は、65歳以上で介護が必要と認められた人が受けられるもの。ただし40歳以上~65歳未満は、一定の老化を原因とする特定疾患によって介護状態とならなければ利用できないので要注意。ただし医師から「治療困難」などと診断された末期がん患者であれば、要介護認定を受けたうえで介護保険が利用できます。
流れは表のとおりです。
介護認定は、いくつもの段階があるため申請を出してから認定を受けるまでに1カ月程度かかるのが一般的。
しかし、認定を待っている間に容体が急変し、利用できないまま亡くなってしまう末期がん患者も少なくありません。この状況を問題視する厚生労働省では認定の迅速化を各自治体に促していますが、認定までにある程度の時間がかかってしまうのが現実です。
介護保険を利用しながら在宅治療したいと考えている人は、なるべく早い段階で介護保険を申請する手続きをしておきましょう。今は比較的元気で通常の生活を送っていても、病状が悪化して介助が必要になるかもしれません。そんなとき介護保険を利用すれば、電動ベッドや車いすなどの福祉器具が自己負担1割で借りられますし、住宅改修費の支給、訪問看護、身体介護、訪問入浴サービスなども利用できます。介助が必要な状態になっても自宅で過ごせる可能性が高くなるのです。もしも要介護認定が下りる前に亡くなってしまうと、これらの費用が全額自己負担になるケースもあります。
また、介護保険を利用する上で注意しておくべきなのは、がん患者の要介護度が変わりやすいという点です。介護保険は、要介護度に応じて受けられるサービスや限度額が決まっており、介護認定の更新も認められていますが、がん患者は、急速に介護度が進む可能性があります。その場合には、主治医意見書の診断書に「症状が不安定」である旨を記載してもらうようにするのも一工夫です。