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FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 3
差額ベッド代
FP黒田尚子 くろだ なおこ
1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター
今回は「差額ベッド代」について取り上げます。入院するとき個室を希望していれば話は別ですが、希望していなくても個室に入る場合があります。その場合の費用って、どうなるのでしょうか……。
「差額ベッド代」というのは差額室料のことであり、病院が料金を自由に決められます。厚生労働省が定めた基準を満たしていれば、3人部屋や4人部屋などでも差額ベッド代がかかることもあります。
差額ベッド代の平均額を見てみると、1人部屋の場合は約7600円(表1)。しかし、これはあくまで平均です。首都圏では1万円以上、なかには10万円以上となっているところも!
差額ベッド代を巡ってのトラブルは多く、なかには1度支払ったものを返還請求するまでに至るケースもあるようです。実際に次のケースで考えてみましょう。
①Aさんは夜中に容体が急変。緊急入院で病院に空きベッドがなく、仕方なく個室に入った。
②Bさんは免疫力が低下しており、個室に入るように主治医に言われ仕方なく個室に入った。
③Cさんは大部屋希望だったが、個室しか空いていなかった。看護師にきちんと説明を受け、仕方なく同意書にサインし、入院した。
Aさんの場合、大部屋が空いていないなど、「病院の管理上の都合」で個室に入ったのですから、厚労省の通知によって本来は差額ベッド代を徴収してはいけないことになっています。
Bさんの場合、免疫力の低下による感染防止など「治療上の必要」が個室に入った理由になります。Aさんと同じく差額ベッド代を徴収してはいけない事例です。
Cさんの場合、病院から説明を受けて同意書にサインをしています。本人が希望していなくても承諾したとみなされますので、差額ベッド代は徴収されます。
要するに治療上の必要性がなく本人が希望すれば差額ベッド代はかかり、またたとえ本人が希望していなくても、同意書にサインをしてしまえば承諾したとみなされてしまうのです。しかし入院時というのはとにかくバタバタしているもの。たくさんの入院書類に紛れ、同意書にサインをしてしまった、ということもあると思います。
お金に余裕のない人が個室を勧められたら、個室に入らなければならない理由や希望していない場合の差額ベッド代はどうなるのかなど、同意書にサインをする前に病院の看護師や事務職員の人とよく相談しましょう。場合によっては支払わずに済むケースもあるかもしれません。病院は私たちの敵ではありません。コミュニケーションが取れていれば、トラブルになることはないはずです。
*「1室あたりのベッド数が4床以下」、「1人あたりの面積が6.4㎡以上」、「個人用の私物の収納設備、照明、小机およびイスがある」など