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FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 9
限度額適用認定証
医療費が高額になったときのマストアイテム「高額療養費制度」ですが、治療が長期にわたるがん患者にとってはたとえ短い期間であっても立て替え払いしなければならないのは大きな負担。そこで、今回はこの制度を事前に申請しておける「限度額適用認定証」をご紹介します。
黒田尚子くろだ なおこ
1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター
がんサバイバーであれば、医療費が高額になった場合、その月々の自己負担限度額*(以下「限度額」)を超えた部分が戻ってくる高額療養費制度についてはご存じでしょう。それでは、高額療養費制度を事前に申請できる「限度額適用認定証(以下「認定証」)はいかがでしょうか?
認定証は、お薬手帳よりもちょっと小さいサイズの証明書。これをあらかじめ病院に提出しておけば、窓口の支払いは限度額の範囲内まででOK。つまり、いったん余計に医療費を支払って、あとから払い戻しを受けるという作業が必要なくなります。
医療費の支払いが高額な人はもちろん、予定している治療の医療費が限度額を超えそうな人は、加入先の公的医療保険で手続きをして認定証をもらい、医療機関に提出しておくことをお勧めします。
この認定証を提出する必要があるのは、69歳以下の人と70歳以上で住民税非課税世帯の人です。住民税を払っている70歳以上の人は、お持ちの保険証と高齢受給者証を提示すれば、認定証の代わりとなり、支払いは限度額までとなります。
一方で、認定証があっても、従来通りにいったん窓口で限度額を超える治療費を払ってから、支払超過分が戻ってくるというルートをたどらなければならないケースもあります。その例を示します。
高額療養費制度が使えるのは、1人が1つの病院で限度額を超えたときだけではなく、複数の医療機関にかかっている場合、あるいは、同じ公的医療保険に加入している家族の治療費がそれぞれ2万1,000円を超え、なおかつすべてを合算して限度額を超えた場合も超過分が戻ってきます。この場合は医療機関や患者さんをまたいでの合算となるため、すぐに窓口で計算されません。
また、同じ人が同じ月に入院と外来で治療を受けた場合も、同様にそれぞれ2万1000円を超える必要があるため、あとからの計算とならざるをえません。
医療費だけを考えれば、複数の診療科での治療が必要な人は、さまざまな診療科のある総合病院で同じ月の間に治療を受けたほうがオトクですし、選択可能なら薬も院内処方で受けた方がすべての支払いが合算でき、限度額の範囲内で済む可能性が高いということです。
ただし、これらの合算の方法は、被保険者の年齢や合算する人の医療保険制度等によって要件が異なり、なかなか難しいしくみになっています。詳しくは、加入先の公的医療保険制度で確認するようにしましょう。
*自己負担限度額は、69歳以下の一般所得の人で「月額8万100円+(医療費総額-26万7,000円)×1%」