FP黒田尚子の知ットク!がんマネー処世術 11

がんとキャリア形成

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2014年1月
更新:2014年5月

  

くろだ なおこ 1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター

がんになると、医療費などの支出が増えることばかりに気を取られてはいませんか? 実は、がんと経済的な問題で最も考えなければならないのは、一時的な支出増ではなくて、がんに罹患したことによって収入が継続的に減ってしまうことなのです。

■診療時と現在で、あなたの収入・世帯収入に変化はありましたか

■「罹患時のがんのステージ」と「収入の変化」の関係

「がんサバイバー」向けアンケート調査報告(2012年2月)/アフラック

まず、上の図表をご覧ください。これは治療と就労の両立に関する患者調査の結果です。がんと診断後、個人収入・世帯収入ともに半数近くが減ったと回答しています。

さらに注目したいのは、下の図表です。これは「罹患時のがんのステージ」と「収入の変化」の関係を表したものです。これを見ると、罹患時のステージに関わらず、がん罹患後に収入が減ったと答えた人が約30 ~ 40%にものぼっています。

一般的に、末期のがん患者であれば、仕事を変わったり、辞めざるを得なかったりする状況は想像できます。でも、0 期やⅠ期といった早期のがん患者であっても、収入が減ってしまうという現実は見過ごせません。

ちなみに私の乳がんのステージはⅡ期でしたが、4 年経過した今でも告知前と変わらず、仕事に支障をきたすということは全くありません(逆に、もっと働いているかも……)。

それでは、どうして「がんに罹患した」という事実だけで収入が減ってしまうのでしょうか?

がん患者の就労や復職を妨げる原因としては、①がんや治療による身体的・心理的な影響(抗がん薬治療などで副作用や後遺症がひどく、元のように働けないなど)、②職場の環境や対応、人間関係(がんに対する理解がなく診断されてすぐに他の部署に転換・解雇されたなど)、③社会的な保障やサポートの不足(健康保険から所得保障として「傷病手当金」の制度はあるが十分ではない。休職中の社会保険料負担が大きいなど)が挙げられます。

いずれにせよ、がんと就労に関しては、複雑な事情や問題が絡み合って一筋縄ではいきません。

そこで、私が提案するのは、がんや病気になっても働き続けられる環境づくり、キャリア形成を行うことです。

がんが心配だからといって民間の保険に過剰に加入するのではなく、働き続けて収入を減らさないように工夫しておくことが最大の"保険〟なのではないでしょうか?

今月のひと言
例えば、大黒柱の夫ががんになれば、妻が変わってメインの稼ぎ手になるなど、
家族で"リスク分散"する方法も効果的です!

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