黒田尚子のがん節約術

財布まで「がん」になる!

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2012年1月
更新:2013年6月

  

がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

黒田尚子(くろだ なおこ)

1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。

はじめまして。FPの黒田です

 私は、ファイナンシャル・プランナー(FP)として独立して13年になります。

その当時はFPの認知度も低く、セミナーなどでも最初に「FPとは?」なんて説明から始めなくてはなりませんでした。

10年以上経った今、飛躍的にFPの地位が向上したとは思えませんが、FPについて解説することはほとんどなくなりました。

では、FPとはどんな仕事なのでしょうか?

人間生きていくためにはお金が必要です。そのお金にまつわる問題を全部まとめて解決しちゃいましょう! というのがFPのウリなのです。「家計のホームドクター」などと呼ばれることもあります。

具体的な守備範囲は、生活設計、教育資金、住宅資金、保障設計、年金、金融商品、税金・相続、不動産などなどです。個人のお金のことなら何でもご相談くださいというのが私たちの仕事なのです。

そんなFPである私が、ある日突然、がん患者になってしまいました。

2009年12月に乳がん告知を受けたのです。ステージは2期でした。

翌年2010年2月に右乳房全摘手術、8月に乳房再建手術を行いました。本稿を執筆している2011年10月末現在、ホルモン療法を行っています。

ちょうど昨日も3カ月に1度のホルモン注射リュープリンを打ってきたばかりです。注射料は2万4 576円也。迷わず精算はクレジットカード払いにしました。

がん患者はお金の痛みも抱えている

まったく、がん患者になると、財布まで「がん」になってしまいます。

ところが、こんなにもがんは金食い病なのに、自分ががんになって調べてみると「がんとお金」に関する情報がほとんどないことに驚きました。

そりゃあ、ひと昔前のように「がん=死病」と考えられていたころであれば、命あってのモノダネ。死んでしまえば何にもならないのだから「お金などいくらかかっても」となるでしょうが、がん医療の進歩によって、がんの治癒率や余命は向上しています。

今やがんと共存共生しながら、長期治療を図っていく時代なのです。

会社で仕事をしながら「じゃあ、ちょっと抗がん剤治療に行ってきま~す」なんてこともできる時代です。

そうなると、これまであまり取り沙汰されてこなかった「がんとお金」の問題がクローズアップされるようになってきました。

ただし、私が知る限りではまだまだ。というか、そもそも、がんのお金に困ったときに利用できる公的制度や民間保険、その他さまざまな制度やサービスは、広範囲にわたるうえ、わかりにくい、使い勝手が良くないなど、がん患者にとって不親切この上ないようにできています(と私は思っています)。

しかもすべてセルフサービスだから、基本的には自分自身で調べて手続きをする必要があります。でも、いったい、そんなの誰が教えてくれるのでしょうか?

ということで、がん患者でもあるFPの私の登場となったワケです。

この連載で、がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

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