黒田尚子のがん節約術

高額化するがん治療費には「高額療養費」の活用を

イラスト/コヤマ ノリエ
発行:2012年2月
更新:2013年6月

  

がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

黒田尚子(くろだ なおこ)

1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。

Q:利用できる公的制度についどの制度から利用していけばいいですか?

先日、食道がんと診断されました。病期は1期で早期ということですが、「がん」告知を受けて非常にショックです。ただ、これからの治療費のことを考えると、そうも言っておられず、病院の窓口でお金に関して利用できる公的制度について教えてもらいましたが、なんだか難しくて……まずはどの制度から利用していけばいいですか?

A:術後の後遺症と考えられる

お気持ちは痛いほどわかります。がん告知を受けた直後は、ショック状態に陥っていても、治療方針や手術、入院など具体的なスケジュールが固まってくると、「はて、治療費はどれくらいかかるのかしら」と急にお金のことが不安になってくるものですから。

がんに限らず、病気の医療費などで困ったときに、まず利用したいのが「高額療養費制度」です。

これは、医療費が一定額以上を超えた場合にお金が戻ってくる健康保険など公的制度の1つ。高額化しやすいがん治療を受けるための必須アイテムといえます。

高額療養費には、一時的な医療費の立て替えが困難な人のための「高額療養費貸付制度」や入院時に便利な「限度額適用認定証」などの変則技もあるのでお忘れなく。

次に、会社などにお勤めの方なら「傷病手当金」も知っておきたい公的制度です。

いわば、休職中の所得補償で、一定の要件を満たせば、休職中は1日につき給料×3分の2がもらえます。ただし、最長1年6カ月まで。

なお、勤務先が健康保険組合に入っている場合、付加給付という独自の手厚い保障が設けられているケースも多く、勤務先から配布された「福利厚生ハンドブック」を引っ張り出して受けられる給付がないかチェックしてみましょう。

また、確定申告でかかった医療費に応じて税金の還付が受けられる「医療費控除」も、がん患者であれば適用になる可能性が高いもの。確定申告の際は、支払った医療費等の領収書が必要になるので、きちんと保管しておくことです。

公的制度以外にも、あなたが加入している民間保険から受けられるサービスがあるかもしれません。

最近、健康相談サービス、セカンドオピニオンなど、医療関連の付帯サービスを充実させる保険会社が増えているからです。

とくに、セカンドオピニオンなど、健康な一般人なら第3者の専門医など見つける術も時間もないのが正直なところ。せっかく高い保険料を支払っているのだから、こんなときこそ使えるサービスは利用したいものです。

このように、ざっと挙げただけでも、公的・民間問わず様々な制度やサービスがありそう。しかし、肝心なのはすべて「セルフサービス」だということ。

そう。哀しいかな。利用したければ、自分で調べたり手続きしたりしなければならないのです。

もちろん、これらの制度については、相談支援センター、各医療機関や各自治体の相談窓口、医療ソーシャルワーカーなどに相談すれば詳しく教えてくれますので、こまめに足を運んでみましょう。

FP黒田尚子からひと言
色々な制度があっても知らなければ意味がありません。自治体等には制度の周知に注力して欲しいところです。

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