膀胱全摘手術はしたくない

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2024年1月
更新:2024年1月

  

膀胱がんと診断され、膀胱全摘手術を勧められました。しかし、人工膀胱ではQOL(生活の質)が低下してしまうので、膀胱全摘手術はしたくありません。また全摘しても再発の可能性はあるといわれているので、それならこのまま生きられるとこまで生きたいと思っていますが、私の考えは間違っているでしょうか。

(68歳 男性 東京都)

再発率の低い4者膀胱温存療法の選択が

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

膀胱がんで膀胱全摘除の適応となる病状は、膀胱の壁の深くにある筋層まで浸潤する筋層浸潤性膀胱がんか、BCG膀胱内注入療法後に残存または再発する筋層非浸潤性膀胱がんの何れかがほとんどです。相談者の経過から、筋層浸潤性膀胱がんを想定して回答します。

筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は、抗がん薬による術前化学療法後の膀胱全摘除・尿路変向術です。尿路変向のうち最も高頻度に行われる回腸導管では、お腹に貼り付けた集尿袋で排尿を管理します。その他、腸を袋状に再建して膀胱の代わりとする、自然排尿型の新膀胱があります。尿路変向によるQOLの低下は、回腸導管では主に体の外観の変化に起因します。

新膀胱では、術後の厳格な排尿管理(夜も2~3時間おきに起きて排尿)の必要性、夜間の尿失禁や生涯自己導尿(自分で尿道に管を入れて尿を抜く操作)が必要となる可能性があることがQOL低下の原因となります。一方、術前に膀胱がんによるつらい症状を経験されていた患者さんでは、膀胱全摘除後に症状が消失することでQOLの向上が期待されます。

比較的病変が小さく、膀胱内で限局的な筋層浸潤性膀胱がんの場合、膀胱温存療法による根治も充分に期待できます。膀胱温存療法は、経尿道的膀胱腫瘍切除で最大限の腫瘍切除を行なった後、残ったがん組織を抗がん薬と放射線治療を併用して治療します(3者併用膀胱温存療法)。

3者併用膀胱温存療法では、完全寛解した症例の10~30%程度に筋層浸潤性膀胱がんの再発が報告されており、顕微鏡レベルのがん細胞残存が主な原因と考えられています。駒込病院では、このような再発を阻止して根治性を高めるべく、3者併用療法後に地固め治療として、膀胱部分切除を行う4者併用膀胱温存療法を行っています。

その結果、筋層浸潤性膀胱がん再発率は低く抑えられています。膀胱温存療法は専門性の高い治療であるため、実施できる施設は限られています。相談者が希望される場合は、膀胱温存療法を実施する施設のセカンドオピニオン外来の受診をお奨めします。

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