脊椎にできた骨肉腫。その治療法は?

回答者:川井 章
国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科医長
発行:2012年12月
更新:2014年1月

  

2012_12_18_01

19歳になる息子についての質問です。息子は、脊椎にTNM分類で2期の悪性度の高い骨肉腫があると診断されました。治療法として、重粒子線による放射線治療を提案されています。重粒子線治療とはどのような治療法で、これ以外に有効な治療法はないのでしょうか?

(青森県 男性 52歳)

A 局所治療法として2つの方法

ご相談者のお子さんは、TNM分類で2期の悪性度の高い骨肉腫があるということですが、幸い、遠隔転移があるわけではありませんので、根治する可能性は十分にあります。

現在、脊椎に生じた原発性悪性骨腫瘍に対する局所治療法としては2つの優れた方法があります。

1つは外科的に腫瘍を切除する方法で、もう1つは、お子さんが提案されている重粒子線による放射線治療です。

外科的に脊椎腫瘍を切除する方法としては、脊椎全摘術(TES)というわが国の富田教授により開発された手術術式があります。この手術では、手足の運動に大切な脊髄神経を温存したまま腫瘍に侵された脊椎骨を全切除します。

この手術は高度な技術を要する手術であるため、腫瘍の専門医に加えて脊椎を専門としている整形外科医がいる限られた病院で治療を受けられることをお勧めします。ただ、十分に適応を検討して適切に実施された場合の治療成績は優れていますので、ご相談者がまだお聞きになっていなければ、この治療法の可否について主治医の先生に尋ねてみられるのもよいかと思います。

手術による摘出が難しい場合にはもう1つの局所根治を望める方法として、重粒子線による治療が考えられます。

重粒子線治療は、X線などの従来の放射線治療と比べて、腫瘍に対する生物学的効果が大きく、骨の肉腫など放射線治療抵抗性の腫瘍に対しても高い治療効果が期待できる治療法です。

現在、国内では、数カ所の施設で治療を受けることができます。また、新たな治療施設の建設計画も進んでいますが、未だ限られた施設でしか治療を受けられない点が課題です。

重粒子線治療は、とくに仙骨に発生する脊索腫と呼ばれる悪性骨腫瘍に対しては優れた治療成績が得られることが明らかになっています。

骨肉腫においては、それほど十分なエビデンス(科学的根拠)が確立されているわけではありませんが、手術が困難な場合、現在のところこの治療に勝る治療法はないと考えられますので、よくご相談の上、治療法を選択されることをお勧めします。

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