骨肉腫の化学療法の内容と人工関節の注意点は
右脛の骨肉腫という診断で、「化学療法と膝の人工関節への置換が必要」と言われました。どのような化学療法をするのでしょうか。また、人工関節は破損などで入れ替えが必要になることもあると聞いて心配です。再手術を防ぐためにできることはありますか。
(23歳 女性 埼玉県)
A 術前術後MAP療法を行う 人工関節は感染に注意
国立がん研究センター中央病院の川井 章さん
骨肉腫の治療は、原発巣の広範切除術と手術前・後の補助化学療法(MAP療法が一般的)を行うのが標準的です。手術前に*メソトレキセート(M)、アドリアシン(A)、シスプラチン(P・プラチナ製剤)の3種類の抗がん薬によるMAP療法を数回行い、術後、さらに同じ抗がん薬による治療を数回繰り返し、8~10カ月かけて治療を行います。抗がん薬の副作用は、脱毛、悪心・嘔吐、骨髄抑制、好中球減少、発熱、肝障害、腎障害などで、これらの症状を注意深くコントロールしながら治療を行います。
また、人工関節を入れた患者さんが、何らかの理由でやり直しの手術が必要になる確率は、手術後10年で約50%と報告されています。その原因としては、人工関節の緩み・破損と感染が多く、とくに子供、男性、抗がん薬治療を受けた人、腫瘍の大きかった人は、再手術になりやすい傾向があるといわれています。
再手術を防ぐために患者さんができることは、過度なスポーツなどで人工関節に負担をかけないことと、できるだけ感染を防ぐことです。巻き爪、水虫などの手足の感染創や、虫歯の治療などをきっかけに、血液中に入った細菌が人工関節に付着することが感染の原因と想定されています。体を清潔に保ち、けがや虫歯は早急に治療をして、そのような場合は予防的に抗生物質を服用しておくように心掛けることが大切です。
*メソトレキセート=一般名メトトレキサート