骨肉腫で人工関節に。感染症を繰り返すが、予防策はないか?

回答者:川井 章
国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科医長
発行:2011年9月
更新:2013年10月

  

2年前に骨肉腫と診断され、人工関節の手術をしました。しかし、術後に細菌感染を繰り返し、2度再手術をしています。感染症予防のために気をつけることはありますか。

(滋賀県 男性 21歳)

A 身体や手足の爪を清潔に保ち、全身疾患の治療をきちんと行う

骨肉腫に対しては、現在では計画的な集学的治療によって、約8割の患者さんは手足を残して治療を行う、いわゆる患肢温存術ができるようになりました。この患肢温存術のうち、7~8割は人工関節によって再建されていると考えられます。

せっかく温存した手足ですが、ご相談者のように、手術後しばらくたって、人工関節が感染を起こしたり、破損したり、入れ歯が緩むのと同じように人工関節と骨との間が緩むといった不具合が生じることがあります。そのときには、人工関節を抜いて新規に入れ替えたり、せっかく残した足を切断せざるを得なかったりします。

人工関節を入れた患者さんが、何らかの理由でもう1度やり直しの手術をしないといけなくなる危険性は、手術後10年間で50パーセント前後と報告されています。骨肉腫はとくに若い方が多くかかる病気ですので、患者さんの治療後の長い一生を考えると、これは大変大きな問題です。患肢温存術が増え、術後長期経過した患者さんが増えてくるとともに、このことが現実として大きな問題になってきています。

術後早期の感染は、術中あるいは術後の傷口からの感染が多いと考えられています。医師がいくら注意しても、残念ながら手術中や術後の傷からの感染は未だゼロにはできていません。

一方、傷はきれいに治ったのに、術後半年以上たってから、それまできれいだったところが腫れてきて、人工関節の感染が明らかになることがあります。これを遅発性感染といいます。巻き爪、水虫などの手足の感染創や、虫歯の治療などを契機として血中に入った細菌が人工関節に付くことが原因の1つとして想定されています。

感染予防のために患者さん自身が気をつけられることがあるとすれば、この遅発性感染を引き起こすような原因をできるだけつくらないこと、すなわち、体の清潔に気をつけ、手足の爪をきれいに保っておくこと、けがをしたときにはできるだけ早く病院で適切な処置を行ってもらうこと、さらに虫歯の治療時にはあらかじめ予防的に抗生物質を服用しておくことなど、日常生活のちょっとした気遣いではないかと思います。

また、糖尿病などの全身的な疾患は感染に対する抵抗力を弱めますので、このような持病をお持ちの方は、その治療をきちんと行っておくことも重要です。

集学的治療=手術や放射線療法と局所療法、薬物療法などを組み合わせた治療法
患肢温存術=悪性腫瘍(肉腫)ができた肢全体ではなく、病変部分だけを取り除き、金属製の人工関節を使用するなどして、手足を残して治療すること

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