3期の脂肪肉腫と診断。術前化学療法は必要?

回答者:川井 章
国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科医長
発行:2012年12月
更新:2014年1月

  

2012_12_18_01

大腿部にしこりがあり、TNM分類で3期の脂肪肉腫と診断されました。かかりつけのお医者さまには、手術の前にアドリアシンとイホマイドを併用した化学療法を行ったほうが良いと言われ、現在行っていますが、本当にこの治療法でいいでしょうか?先に化学療法を行ったほうが良い理由をお教えください。

(埼玉県 女性 58歳)

A 術前の化学療法を行うことも有効

TNM分類で3期の脂肪肉腫ということは、ご相談者の場合、転移はしていないけれども、局所に悪性度の高い大きな腫瘍があると考えられます。

このような場合、手術で局所の原発巣を取りきっても、数年以内に肺などに遠隔転移を生じる危険性が高いことが知られています。この遠隔転移の発生を抑え、原発巣の縮小・より良い患肢機能の温存を図る目的で行われるのが術前化学療法です。

これまでの臨床試験の結果を解析した所、このような補助化学療法によって、四肢原発の高悪性軟部腫瘍では約10%の生存率の改善が期待されることが示されています。

また、我が国で行われたJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の多施設共同臨床試験の成績も優れており、四肢に発生した高悪性度の大きな軟部肉腫に対しては、術前化学療法を行うことは十分なメリットがあると考えられています。

薬剤としては、ご相談者が現在受けておられるアドリアシンとイホマイドを併用した化学療法が最もよく用いられます。この化学療法を3週間間隔で術前・術後に計5~6回行うことが一般的です。

しかし、一方では、化学療法に伴う骨髄抑制や心機能障害、吐き気などの副作用の問題、化学療法の効果が乏しい腫瘍の存在など、必ずしもすべての患者さんにとって術前化学療法を行うことがベストな治療であるとはいえないことも事実です。

化学療法の意義、実際の化学療法の効果、副作用などを主治医の先生とよく相談して、納得された上で化学療法の続行の是非をお決めになられるのが良いと思います。

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