海綿静脈洞の髄膜腫。手術とガンマナイフのどちらがいいか
目がぼやけたり、目の奥が痛くなったりするので病院でくわしく検査したところ、頭の奥の「海綿静脈洞」に4センチほどの髄膜腫が見つかりました。主治医には手術を勧められていますが、「ガンマナイフ」という頭を切らなくてすむ放射線治療もあると聞きました。私の場合、どちらの治療法がいいでしょうか? また、髄膜腫はほとんど良性だが、悪性もあるとのこと。私は症状が急に悪化したので、悪性ではないかと心配です。ご意見を聞かせてください。
(大阪府 女性 45歳)
A ガンマナイフが適する場合が多い
髄膜腫は脳を覆う硬膜から発生する脳腫瘍の1種です。脳の内側に向かって増殖していくと、脳を圧迫して頭痛や神経の麻痺といったさまざまな症状が現れます。女性の患者さんは男性と比べて2倍多いのも特徴。硬膜のいたるところにでき、頭蓋骨底部にできると、ご相談者のように、海綿静脈洞に入り込むこともよくあります。
海綿静脈洞は目の奥のちょうど頭の真ん中あたりにあり、静脈が海綿のような形で膨らんでいます。動脈やさまざまな神経も集まる交差点のような部位です。そのため、海綿静脈洞の髄膜腫は手術するのがとても難しく、しばしば腫瘍を取りきれなかったり、血管や神経を傷つけてさまざまな障害を起こしたりします。
ガンマナイフは簡単にいえば、同心円状・半円球状にしきつめられた201個のコバルトから微弱なガンマ線がそれぞれ放出され、狙った病巣ですべてが1点に集中するように仕組まれた放射線療法の1種です。病巣には201倍の放射線のパワーが集中しますが、それ以外の部位にはダメージがほとんどありません。コンピュータで計測するので、病巣に正確に(0.1ミリ単位)放射線を当てられます。脳内であれば、どんな部位でも治療できるので、海綿静脈洞の髄膜腫には適しているといえます。
一般には、3センチ以上の髄膜腫はガンマナイフには大きすぎて、手術が適応とされていますが、ケースによってはガンマナイフでも治療は可能です。また、取りやすい部分だけを手術で摘出し、そのほかの部分はガンマナイフで治療することもあります。いずれにしても、ガンマナイフを使えるかどうかは医師の経験と技量にかかっているので、実績のある医療機関で相談されたほうがいいでしょう。施設によっては治療計画用コンピュータで、海綿静脈洞内の腫瘍と正常脳神経との微小解剖学的関係が如実に把握され、寸分違わない治療へと導いてくれます。
ご相談者は悪性腫瘍の可能性も心配されていますが、髄膜腫のうち、悪性腫瘍の割合は数パーセント程度です。確かに症状が急速に進んだり、脳組織への浸潤の度合いが強かったりした場合、悪性腫瘍のこともあります。また、海綿静脈洞の腫瘍の中には神経鞘腫、血管腫、他臓器からのがん転移などのケースもまれにあります。しかし、画像診断でほとんど判別がつくので、あまり心配しなくてもいいでしょう。