術後リュープリン投与2年。中止してよいのか

回答者・上野貴史
板橋中央総合病院外科医師
発行:2015年4月
更新:2015年7月

  

2年前にステージⅢで、術前化学療法FEC+T療法、乳房全摘、リンパ節郭清をし、術後タモキシフェンとリュープリンを服用しています。現在再発、転移はしていません。
先日主治医に「リュープリンは2年経つので止めてもいいでしょう」と言われました。本当に止めてしまってもいいのでしょうか。

(38歳 女性 千葉県)

リュープリンは5年投与がよい。タモキシフェン10年投与も考慮

板橋中央総合病院外科医師の
上野貴史さん

現在、タモキシフェンとリュープリンを併用しておられますが、そもそも閉経前のホルモン受容体陽性患者さんに、術後タモキシフェン単独でよいのか、リュープリン等のLH-RHアゴニスト製剤を併用したほうがよいのか、確固たるエビデンス(科学的根拠)はありませんでした。

それが、昨年(2014年)12月に発表された大規模臨床試験(SOFT試験)から、術後化学療法を行ったようなリスクの高い、とくに35歳未満の閉経前女性に対しては、両製剤を併用したほうが再発リスクを有意に減少させることが明らかになりました。

SOFT試験では、術後化学療法を行わなかったグループ(低リスク群)と行ったグループ(高リスク群)の中から、閉経前のホルモン受容体陽性患者約3,000人に無作為に ①タモキシフェン単独群 ②タモキシフェン+卵巣機能抑制療法群 ③エキセメスタン+卵巣機能抑制療法群の3群に割り付けて5年間追跡、治療成績を見たものです。

これによると、術後化学療法を受けていた閉経前女性での非再発率は、タモキシフェン単独群78%、タモキシフェン+卵巣機能抑制療法群82.5%、エキセメスタン+卵巣機能抑制療法群85.7%という結果でした。タモキシフェン単独よりも、2剤併用のほうが有意に再発率を減少させました。観察期間が短いので全生存率に関してはまだ報告されていませんが、恐らく有意差がつくと予想されます。なお化学療法を行っていない低リスク症例に対してはタモキシフェン単独で良く、他の製剤を併用する意義は認められませんでした。

SOFT試験の結果が出るまでは、LH-RHアゴニスト製剤の併用期間は一定せず、2~3年行うことが多かったのですが、今回の試験結果を踏まえると、ご相談者はステージⅢの高リスクに該当し、リュープリンをあと3年実施したほうが良いでしょう。またタモキシフェン単剤投与の場合、投与期間は昨年のASCOガイドラインで5年から10年に変更されています。5年併用療法終了後、あと5年単剤内服も考慮できます。

SOFT試験の結果からみると、初回からの併用療法ではエキセメスタン+リュープリンが考慮できますが、既にタモキシフェン2年投与した後からの変更については、データがないことと保険適用の問題もあり、残念ながら質問者にはお勧めできません。

FEC+T療法=5-FU+ファルモルビシン+エンドキサン+タキソテール タモキシフェン=商品名ノルバデックスなど リュープリン=一般名リュープロレリン 卵巣機能抑制療法=GnRHアゴニスト製剤、卵巣摘出術または卵巣への放射線照射 エキセメスタン=商品名アロマシンなど

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