骨転移に放射線治療を受けたほうがよいか

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2010年4月
更新:2014年1月

  

右乳房の切除手術をしてから3年間、アロマターゼ阻害剤のアリミデックス(一般名アナストロゾール)を服用中です。骨粗鬆症などの骨の障害を減らすために、ビスホスホネート製剤も飲み始めました。乳がんの骨転移に、放射線治療が有効と聞いています。 放射線治療を受けたほうがよいのでしょうか。

(大分県 女性 60歳)

A 放射線治療は予防のために行うものではない。現時点では不要

ビスホスホネート製剤は、アロマターゼ阻害剤の副作用の骨粗鬆症を防ぐために服用します。

副作用の骨粗鬆症を防ぐには、ビスホスホネート製剤のほかに、カルシウムやビタミンDなどを摂取したりします。

乳がんによる骨転移は、アロマターゼ阻害剤の副作用の骨粗鬆症とはまったく違うものです。
仮に、骨転移が起きたときには、主に、疼痛緩和とか、進行を抑えるために、薬物治療を行います。

骨転移による痛みをやわらげたり、骨折を予防する目的で、放射線治療を行うこともあります。
この放射線治療は、骨転移の予防のために行うのではありません。

ですから、現時点では、放射線治療を用いることはありません。

ビスホスホネート製剤には、内服薬と点滴があります。内服薬には体内吸収に変動があるという欠点があり、その効果が確実に得られるのは点滴です。点滴用ビスホスホネート製剤のゾメタ(一般名ゾレドロン酸)は骨転移治療には保険適用がありますが、骨粗鬆症には使えません。

ビスホスホネート製剤を補助的に使用することで、骨転移などの再発が減少する可能性が指摘されています。実際、ゾメタとホルモン剤を併用すると、がんの再発を減らすことができたというデータが出ています。しかし、過去に経口ビスホスホネート製剤の使用で効果がなかったというデータもあり、まだはっきりとした結論はでていません。現在、大規模臨床試験が行われているところです。

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