骨転移の治療法は?抗がん剤治療の効果は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2010年6月
更新:2013年11月

  

去年の1月に乳がんの肺・骨転移が見つかりました。骨転移は2カ所で、ゾメタ(一般名ゾレドロン酸)の治療を受け始めましたが、歯の治療を受けたところ、目の周りがしびれるようになり、ゾメタは中止になりました。ホルモン剤は変更して受けていましたが、咳が止まらない上、腫瘍マーカーが上昇したため、7月から抗がん剤治療になりました。12月までタキソール(一般名パクリタキセル)を6クール受けました。抗がん剤の投与を受けて2カ月後の骨シンチ検査では、がんの転移箇所はさらに広がっていましたが、「抗がん剤は骨転移にも効く」という主治医の言葉を信じ、治療を続けていました。しかし昨年末、セカンドオピニオンで伺った医師に「頸椎と脊髄への骨転移は重大で、下半身が麻痺することもある。サイバーナイフの治療を勧める」と言われました。その後、元の病院で骨シンチ検査を受けたところ、前回よりは改善していましたが、頸椎などには、まだ病巣が写っていました。今、骨の痛みはありませんが、今後、まずはゾメタを再開してもらおうと思います。口腔外科医も「ゾメタと顔のしびれは関係ないだろう」と言っているからです。放射線治療や整形外科的な手術も、必要なら受けたいです。また、手足と顔のしびれがひどいため、抗がん剤は休薬しています。

こうした状況で、以下の2点について伺います。

(1)骨転移への抗がん剤の効果はどれぐらいあるでしょうか。

(2)頸椎・脊髄への骨転移の治療法とよい治療施設について教えてください。

(山形県 女性 51歳)

A 抗がん剤を替えて治療。放射線の局所照射も検討

まず(1)に関連することからお答えします。

骨転移への抗がん剤治療の効果が、肝転移や肺転移に比べ、よくないということはありません。抗がん剤治療の効果は、骨転移に対しても、ほかの病変と同様にあります。

ただし、ご相談者は「抗がん剤投与を受けて2カ月後の骨シンチ検査では、がんの転移箇所はさらに広がっていた」とお書きですから、使用中の抗がん剤であるタキソールの効果は少し悪いのかもしれません。抗がん剤治療の効果を見るには、腫瘍マーカーの値を確認してみるとよいでしょう。

しびれが強いためにタキソールは休薬しているようですが、しびれの起きにくい抗がん剤、たとえば、アドリアシン(一般名塩酸ドキソルビシン)やナベルビン(一般名ビノレルビン)、タキソテール(一般名ドセタキセル)に変更して、抗がん剤治療を再開するのもよいと思います。あるいは、骨転移の箇所に、放射線治療を行うことを検討してもよいかもしれません。

(2)に関してお答えします。

頸椎と脊髄への骨転移から、下半身が麻痺することもあると言われたようですが、骨の痛みがなく、MRI(磁気共鳴診断)検査の結果、脊椎管が狭くなっているようなことがなければ、麻痺が起こることは通常ありません。

まったく症状がない状態から、急に麻痺が起こることは、まずないといえます。

骨の痛みが続き、脊椎が圧迫されているような状態なら、麻痺が起きる可能性もあり、通常は放射線照射を行います。

放射線治療は多くの医療施設で受けることができます。

ただし、照射を行っても骨転移の状態が非常に悪い場合などは、整形外科での手術が適応になることも稀にあります。その場合は、腫瘍に関する手術を多く行っている整形外科医を探すことが必要です。

麻痺がなければ経皮的に硬化剤を脊柱に注入して骨を固める治療が適応になることもあります(保険はまだ適用されていません)。

なお、ゾメタを再開するのはまったく問題ありません。一般的には、骨の破壊を多少防ぐことが期待できます。

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