術創から膿のようなものが出るが……

回答者・上野貴史
板橋中央病院 外科医師
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

10月初旬に温存手術を受けました。病理検査から、グレード2のルミナルB(ホルモン陽性・HER2陽性)の浸潤がんと言われました。これから放射線治療+ホルモン療法の予定です。ただ、よくマッサージをするように言われたので行っていたところ、下旬頃に手術創の端から膿のようなものが出てきました。病院で診てもらったところ「乳腺を取った箇所から出ることがある」と言われ、そこでも押し出され、それまで張っていた箇所がくぼんできました。

その後、ガーゼ交換の際にマッサージをするときなどには、赤みがかった半透明の液体が出てきます。術後、このようなことはよくあるのでしょうか?

(38歳 女性 東京都)

「膿」と「膿のようなもの」はまったく異なる

板橋中央病院外科医師の上野貴史さん

縫合した創の治癒が不完全だった場合、術創から液体が流れ出ることがあります。その要因に、感染や血流不全などが挙げられます。流れ出る液体は、一見すると似ていますが、「膿」と「膿のようなもの」でまったく異なる分泌液となります。

黄色くドロドロとした「膿」は、感染を引き起こした細菌と、それを撃退するために働いていた白血球の死骸が混じり合ったものです。

膿には毒素を含む細菌が増殖しており、異臭を放ちます。膿の分泌は、感染症に罹っていることを意味するため、発熱や疼痛といった症状が現れ、治療に抗生物質を服用することが必要になることが多いです。放射線治療などは、感染症が回復するまで待つことが普通です。

一方で、透明感があり(血液が含まれると赤みがある)サラサラとしている「膿のようなもの」には、壊死した脂肪組織や漿液、浸出液(滲出液)、血液などがあります。

感染がなければ、創に肉芽や瘡蓋が形成されて浸出液も自然に止まり、その後のがん治療には問題ないことがほとんどです。なお、術後の患部をマッサージするということはありません。マッサージはしないほうが創の治りは早くなると思われます。

漿液=体液や体内外への分泌液の性質をいい、粘性の低いサラサラした液体をいう。主に、消化、排泄、呼吸に関与し、唾液・胃液などの消化液、漿膜からの分泌液などがある
浸出液=様々な種類のサイトカインや細胞成長因子が含まれ、分泌されることで創傷面の湿潤・修復する役割を果たす

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