予防ワクチン接種を娘に受けさせたいが…

回答者・織田克利
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座生殖腫瘍学准教授
発行:2014年12月
更新:2015年3月

  

8年前に子宮頸がんで子宮を摘出しました。娘が思春期を迎えました。将来、私と同じ思いをさせたくありません。原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染予防のワクチンがありますが、報道によると副反応(副作用)も強いようで心配でもあります。私は接種させたいのですが、ご意見をお願いします。

(45歳 女性 愛知県)

副反応が出た場合のために 専門のケア窓口を設置

東京大学大学院医学系研究科の
織田克利さん

子宮頸がんはウイルス感染が原因となるがんなので、その感染を予防すればがんになるリスクを大きく減らすことができます。発がんリスクを下げるワクチンのあるがんは非常に限られています。

現在使われている子宮頸がん予防ワクチンは、高リスク型であるHPV16、18型に有効だということがエビデンス(科学的根拠)として確立しています。とくに性行未経験(中学・高校生など)世代での接種が効果的で、日本では2009年に第1号が承認され、その後、国が接種費用を助成することで接種を推奨してきました。

しかし一方で、接種を受けた方々の痛みや運動障害といった副反応が問題になり、厚労省では2013年に「ワクチン接種を積極的には勧めない。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で受けること」という姿勢に転じました。

相談者の言われる通り、副反応に関する報道が広く行われました。その一方、世界的にはエビデンスに基づいて今でも継続的に接種が続けられています。日本でも、将来のリスクを低減するためにご自身で接種したい方や娘さんに受けて欲しいとお考えの方々はたくさんおられると思います。有効なワクチンが存在するのに受けないでいるのは悔しいという声も聞きます。

多くの産婦人科医はワクチンを安全かつ有効に活用していくことによって子宮頸がんの発生や苦しみを減らしたいと強く思っています。その一方、「副反応が絶対に起こらない」と保証した上で接種する方法が確立されていないのも事実です。

また実際に観察されている「ワクチン接種後に生じた病態」については、まだ不明な点が多いのが現状です。

医療側では、子宮頸がん予防ワクチン接種後の痛みに特化して対応する窓口の整備を昨年(2013年)9月より取り組み始めました。東大病院(麻酔科・痛みセンター)を含め、痛みに関する窓口「痛みセンター連絡協議会所属医療機関」が全国各地域に設置されています。

ワクチン接種後の諸症状(主として痛み、しびれ、脱力など)が持続するようなら、担当医師に紹介状を依頼した上で、受診申し込みできます。「症状が出てしまってからでは遅い。神経症状以外にも多彩な症状が発症しうる」という問題をはらみますが、こうした医療機関があることも知っておいていただきたいと思います。

ワクチンの安全性に関する課題が1日も早く解決されることを望んでいます。

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