全摘手術後の排尿障害に妙薬はあるか

回答者・織田克利
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座生殖腫瘍学准教授
発行:2015年3月
更新:2015年6月

  

子宮頸がんで、全摘手術を受けましたが、排尿のコントロールと足のむくみに困っています。時間を決めてトイレに行ったり、処方薬を飲んだりしていますが、つらいです。外科的な処理や画期的な薬、体操などはあるのでしょうか。

(55歳 女性 神奈川県)

生活の工夫が大切 「リンパ管細静脈吻合」も

東京大学大学院医学系研究科の
織田克利さん

子宮頸がんの手術で排尿障害や足のむくみが問題になるのは、手術の合併症として避けられないというのが実情です。しっかりと病変部を摘出しようとすると、解剖学上どうしても膀胱につながる自律神経へのダメージをゼロにすることは困難だからです。

排尿障害は、時間とともに改善することも多いのですが、完全に元の状態に戻すのは難しいことです。尿意を感じにくくなるので、時間を決めてトイレに行くといった習慣づけも大切となります。生活の妨げにならないようにうまく付き合っていけるようになる人も多いですし、排尿においても自分なりのコツをつかむ方もいます。泌尿
器科に相談して、尿の流出速度や膀胱の機能について客観的に診断してもらうこともできると思います。しかし、膀胱機能を完全に復活させる薬や、外科的に排尿機能を復活させる手術療法、体操などはなかなかないのが現状です。

むくみについては、手術療法に加えて放射線療法を行った場合により強く現れる傾向があります。リンパ節切除を行うと、リンパの流れがスムーズに行われず、下肢や鼠径部付近等にリンパ液が滞ることになります。弾性ストッキングによる圧迫や、下肢に傷をつくらないようなスキンケア、マ
ッサージによる進行予防が基本的な対処法となります。

東大病院(形成外科)では、リンパ管と静脈をつなぐ「リンパ管細静脈吻合」を行っています。超微小血管外科技術の進展により、0.5㎜ほどのリンパ管と細静脈をつないでバイパスを作ることで、リンパの流れが静脈に入るので、むくみを軽減できるという治療です。効果を上げており、他の病院で治療を受けられた方で、この手術を受けられている方も多くおられます。

更年期障害にもいえますが、その時点におけるご自身の状態に合わせて生活のリズムを作り、精神的なストレスをためないよう日々を過ごしていただきたいと思います。

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